2 「あ…あの、それでちとせさんはこれからどちらに行かれるんでしょうか?」 あたしの愛のこもったお説教のおかげか、きっちりデスマス調で少年は言った。 …念のため言っておくと、あたしはタメ口を許さないわけでなく、年下扱いを許さないだけだ。 「あたし?あたしキキョウジムのハヤトってのに用があるんだけど。あんた知ってる?」 すると少年は、驚いたように目を見開いた。 「知ってるも何も、俺キキョウのジムトレーナーです。あの、今からジム行くんで一緒に行きませんか?」 ラッキー! 日頃の行いがいいおかげで(気のせいでなく、まひるが鼻で笑った)ハヤトを知ってる人どころか道案内までつくなんて! 「あ、うん!行く行く。連れてってよ。ところであんた、名前何て言うの?」 「俺はツバサ。鳥使いのツバサです」 「ふぅん。よろしくね、ツバサ。あとさ、別にデスマスじゃなくていいよ。名前もさん付けいらない」 正直むず痒いし。 「え、でも…」 「あたしがさっき怒ったのは年下扱いされたから。タメは全然気にしない」 ね、とウインクひとつ飛ばしてやれば、ツバサは安心したように笑った。 「じゃあちとせ!ジムはこっちだよ!」 そう言って歩き出したツバサのあとを、あたしとまひるは追いかけた。 くだらない話をしながらぶらぶら歩いていると、少し大きな建物の前についた。 「ここがキキョウジム!さ、中に入って!」 がらりと扉を開けると、そこはとても天井の高い空間だった。 「ハヤトさーん!」 ツバサが奥に向かって叫ぶと、そこから青い髪で片目の隠れた少年(多分ツバサとそうかわらないとみた)が現れた。 「おはよう、ツバサ。今日は早いね」 「おはようございます!あの、朝から早速なんですけどジムの挑戦みたいで…」 「あ、ツバサ。あたしジムの挑戦じゃないんだわ」 すると、青い少年とツバサは同時に振り返った。 「え、だってちとせ、ハヤトさんに用があるって…ジムバッジの挑戦じゃないの?」 「んーん、用があるっていうかさ。マツバがキキョウに行くならハヤトんとこ寄ればいいって紹介してくれたから」 あたしがそう言った途端。 ビシッと時が止まった音が聞こえたのは、多分気のせいじゃない。 |