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「おい、ちとせ。そろそろ行かないと、もうすぐ朝だぞ」

ふと、空を見上げたまひるが肩を叩いた。
そういえば、結構長いことマツバと話してた気がする。
言われてみれば、空がほんのり白んできた。

「やっべ、さんきゅまひる。んじゃ、マツバ。あたしそろそろ行くわ」

慌ただしく立ち上がって土埃を払ってると、マツバが何かを放り投げた。

「…?何コレ」

「センベツ。いらなかったら返せよ」

マツバから受け取ったソレは、

「マツバ、これ」

澄んだ色をした、綺麗な勾玉のついたストラップ。
多分これは、マツバの家で作ってるものだ。
(正直いろんな意味でマツバには似合わないけど)

「お守り代わり。ないよりはマシだろ」

「ありがとマツバ!」

ストラップは早速ポケギアにつけよう。
あたしがポケギアのストラップ用の穴に紐を通そうと四苦八苦してると、マツバが口を開いた。

「ちとせ」

「なに、マツバ」

「あれでお前の母さんも心配してるんだからな。適当なとこで帰ってこいよ」

「うん、わかってる」

そう言ってあたしは、ボールからあやめを出した。
あやめはマツバに小さく一礼すると、あたしに背を向けた。

「あやめ、そーゆーことでキキョウまでよろしくね」

『何がそういうことかよくわからないけど、キキョウね』

あやめの背中によじ登ると、いつの間にかエーフィに戻ったまひるが隣にきた。

「じゃあね、マツバにゲンガー。念のため言っとくけど、母様には言わないでよ」

「わかってるさ。じゃあな、気をつけて行けよ」

『ちとせ!無理すんなよ!』

「うん!マツバもゲンガーも元気でね!」

ばさ、とあやめが翼を広げた。
地面が段々遠ざかっていく。

さよならエンジュシティ、生まれ育った街!
またいつか帰ってくる日まで!

夜に溶けるように高く高く、エンジュの夜空に飛び立った。

さぁ、旅の始まりだ!


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