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誰だ。
こんな真夜中に出歩く奴なんて、泥棒とか変わり者とか、どっちにしろろくな奴じゃないに決まってる。

「へぇ、自分のこと棚に上げてよく言うな」



…………



しまった、変わり者の方だった。
できれば聞きたくなかった声が背後から近付いてくる。

「誰が変わり者だって?」

「…イイエ、ナニモ」

振り向く前にとんずらぶっここうと思ったら既にヤツはすぐそばで、がしっと肩を掴まれた。

「こんな時間に何やってんのよ、マツバ」

観念して振り向けば、予想通りというかなんというか。
にやにやと厭味ったらしい目をした(単に垂れ目なだけかもしれないが)マツバが立っていた。

「それはこっちのセリフ。何でこんな時間に出歩いてるんだ?」

「先に質問したのはあたしだかんね。先にマツバが答えなよ」

するとマツバはやれやれと溜息をついて言った。

「俺はこいつらと塔の様子見だよ」

スッとマツバが暗闇を指差せば、そこに気配が生まれた。

『よう、ちとせ!』

「よう、ゲンガー!」

イェイ、と姿を現したゲンガーとハイタッチ。
マツバは憎たらしいけど、ゲンガーはかわいい。
どうやったらあの捻くれたヤツのもとで、こんないい子に育つんだろ。
エンジュ七不思議のうちのひとつに違いない。

「さ、俺がここに居る理由は話しただろ。今度はお前の番だ」

じっと見透かすようにマツバはあたしを見る。
昔っからあたしはこいつのこの目が苦手なんだ。
どんな嘘もごまかしも効かないって思わされて、実際本当に通用しないのだ。

「いいじゃん、マツバには関係ないっしょ」

とりあえずささやかな抵抗を試みた、が、

「へぇ。じゃあ、お前の家に連絡入れても問題ないよな」

いつだって、こいつはあたしの嫌なとこをついてくるんだ。

「…わかった、話すよ。これでいいんでしょ」

あたしが観念してそう言えば、

「別に俺は"言え"なんて言ってないけどな」

なんて、涼しい顔して言い放った。
は ら た つ !


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