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「あのさー、まひる。張り切って家を出てきたはいいけど、」

「ん?なんだよ」

月明かりが照らす夜道をまひると2人、ぶらぶら歩きながらあたしは今直面する最大の問題を口にした。

「いやさ。出発は今日って決めたんだけど、あれだ。行き先決めてなかった」

「はぁあ?!」

あ、心底馬鹿にした目で見られた。

「馬鹿にしてんじゃない、呆れてものが言えないだけだ」

うぐ…!
なんだよーこんなときだけ読心術使いやがって。

ともかく、なるべく早く…遅くても夜明けまでにはエンジュから離れないと。
かといって、いざ家を出たら行きたいところもこれといって見つからない。

「よし!」

そんなときは、これに限る。

「…何やってんだ、ちとせ」

「見てわからないかい、まひるくん。あみだくじだよ」

迷ったときにはあみだくじかジャンケンかその場のノリっていう、大昔からの不文律があるのよ。

「ねぇよ」

すかさずツッコミが入った。
いいもん、あたし負けない。
手厳しいツッコミに泣いてはいけない。女の涙は安くはないのよ。

気をとりなおして、あたしは完成したあみだくじからひとつ、右から2番目を選んで出発した。

あっみだっくじー
あっみだっくじー

とりあえず手近にジョウト各地の名前を地面に書き出して、ずりずり指でなぞってみる。

「…お。キキョウじゃん」

ぴたりとあみだくじが導いたのは、エンジュから程近いキキョウシティ。

「キキョウなら歩いて行けないこともない、けど…とりあえず、今日は早く離れないとだし、あやめに乗っけてもらおっかな」

ぶっちゃけ夜はしんどいし。
あやめだったら、夜でも安全運転だし。

そうと決まったら善は急げだ。
ボールからあやめを出そうとしたとき、背後からあたしたち以外の何かの気配がした。


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