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右、ヨシ!
左、ヨシ!

離れの近くに人がいないことを確認する。
時刻は夜の11時頃。
母様は、寝てるはず。
お手伝いさんも、各自の部屋に戻ってるか明日の仕込みをしてる頃だろうから大丈夫。

可愛くて一目惚れして買ったけど、母様に文句言われそうだから箪笥の肥やしになってた、ビビッドピンクのプリーツスカート。
旅に出るんだもん、好きな格好だって楽しまなくちゃ!

必要最低限の荷物をザックとベルトポーチにまとめて、いざ出発!

「ちとせ」

部屋を出ようとすると、まひるが突然あたしを呼んだ。

「なに、まひる」

「後悔、しないんだな?」

「まひる。あたしが後悔するとしたら、今まで何の行動も起こさなかったことだよ」

そしたらまひるはあたしの頭をくしゃっと撫でた。

「そんならいいよ。ちとせ、忘れ物はねぇな?もう戻れないぞ」

「うん!大丈夫だよ。お財布とポケギアはポーチだし、着替えとかはザック」

急いで詰めたからあんまり自信はないけど。

「そのポケットは?」

「ハンカチとティッシュとハナカミとちり紙だよ」

「ティッシュばっかじゃねえかよ」

「あたし花粉症なの」

嘘つけ、とまひるがあたしの頭を小突いた。


さよならマイホーム!
こんにちは自由!


昼間にこっそり書いた母様への手紙を部屋に残して、あたしは家の塀を乗り越えた。
まるで、脱獄するみたいにスリリングで、これからのことを考えたらわくわくした。

箱庭の中の、与えられるだけの幸せからの脱出。


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