2 「いやね、だからね。あたしだって料理とかできないわけじゃなくてさ、単にあれだ。めんどくせぇだけでさ、」 「やらなかったら一緒じゃねぇかバカヤロウ」 まひるのツッコミに耐え切れずしどろもどろに弁解をしてみたら、案の定白い目で見られた。ちくしょう。 「でもねぇ、こなつ、ちとせお姉ちゃんの作るクッキー好きだよ」 「ありがとう小夏〜!」 ああ、やっぱり小夏はあたしの癒しだわ。 「おい、小夏。あんまりちとせを甘やかすなよ」 小夏に癒されてると水を差すまひる。 なによーこの小舅がー。 あたしの言いたいことを悟ったのか、まひるにジロリと睨まれた。 「それで、ちとせ」 あやめはいつだって冷静で、ぱちんと扇子を閉じた。 「旅に出るとちとせが決めたなら、それもいいわ。でも、本当にその覚悟はあるのね?」 「そうねぇ。中途半端に家出して、途中で戻ったりしたら、今度こそ問答無用でお見合い、結婚かもねぇ」 龍妃が言ったその言葉は、なんだかとっても現実味があった。 あの母様なら、やりかねない。 「あたしさ、割と思い付きで行動すること多いけど、今回はちゃんと考えたつもりだよ」 おかげで今朝知恵熱まで出たんだもん。 「あたし決めたもん。今までずっと母様の言いなりになってたけど、それじゃダメだって」 昔からそうだった。 あたしは短い丈のスカートがはきたかったのに、はしたないと膝より長いスカートや動きにくい着物だったし、朝はコーンフレークが食べたかったのに和食だったし。 あたしだって、もう成人したんだもん! 自分の道は、自分で決める! そして、朝のコーンフレークを勝ち取るんだ! 「だから、あたしは旅に出るよ」 自分でもう一度確認するように。 あたしは、宣言した。 |