2 「……果凜、」 言わずもがな。 あたしのセリフを遮ったのは、果凜その人だった。 「な、んだよ……そういうハナシ、何であたし抜きで進めてんだよ?!」 がつ、と岩壁が蹴り上げられる。 だから……果凜には、まだ黙っていようと思ったのに。 「……まだ、置いてくとは決めてないよ。果凜の様子見て、それで――」 「だからっ!そうだとしても、何で……!」 多分果凜は、あたしの意図を察している。 『姉貴……』 果凜の隣に佇むキラは、不安げにあたしと果凜を交互に見る。 ……あたしだって、果凜と別れたいわけじゃない。 (そこんとこは勘違いしないように) 「だってさ。果凜がもし、本当にここに残りたくても。それでも果凜は絶対、あたしと来るって言うでしょ?」 「……っ、」 果凜は質問には答えず、視線を逸らす。 ――即ち、肯定。 「だからさ。それはあたしが判断するしかないじゃん。あたしは、あんたにとって一番いいようになって欲しいんだよ」 もちろんそれは、果凜だけじゃないけど。 だからあたしはあのとき龍妃を連れていくことを決めたし、他の……例えば小夏やまひるにしたってそうだ。 「……じゃあちとせ。今度はあたしから聞くぜ。……それで、答えは出たのか?」 …………そんなの、 「出た。よ」 家を出るときに、あたしは決めたんだ。 あたしはあたしのやり方で、人間とポケモンがそれぞれ幸せになれるようにするんだ、って。 ……だから、 「嘘つき」 気配を殺して静かに。 あたしの背後から、聞こえる声。 あたしの言葉が嘘なのか。 「嘘つき」と言った、彼女の言葉が嘘なのか。 嘘をついているのは。 |