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「っつーことで黄瀬ェ、オレ様と勝負しろよ」

「ぎゃ!ちょ、青峰っち!包丁こっちに向けないで欲しいっス!」

……そして翌日。
なんていうか……ひじょーにバカバカしい光景が、目の前で繰り広げられていた。

「あー……青峰。ちょっと聞いていい?それと黄瀬はあたしの陰に隠れんな。女々しい」

呆けてその様子を見ていてもいいんだけど、さすがにこれはまずいっしょ。
包丁向けられて逃げだそうとしてる黄瀬をとりあえず引きはがして間に入ってみる。

「あんだよ、時枝」

「あんだよ、じゃないわよ。アンタ、何するつもりなのよ!」

いくらここが家庭科室でも、それが包丁振り回していい理由にはならない。
しかし青峰は、はん、と鼻を鳴らすと、自信満々言いきった。

「あ?そんなの決まってんだろーが。玉ねぎのみじん切り勝負すんだよ」




暗転(ダークアウト)。




こいつ……馬鹿だ馬鹿だと思ってたけど本物の馬鹿だったとは……。
自信満々のたまうあたりがとっても青峰。

そりゃああたしだって手段は選ばないとは言ったけどさ。
玉ねぎだなんて、あまりにアホらしすぎて。
まだ昨日の緑間の作戦のがまっとうに思えてきたわ。

「ま、いーや。とにかくやろーぜ」

青峰が昨日はムリだって言ってた理由がわかったわ……そりゃあ、玉ねぎなんぞ毎日持ち歩いてるわきゃないもんね。
まあ、別にあたしが勝負するわけじゃないからいいか……。
昨日青峰に見せてやったノートのツケは回収しなきゃだし。

「……ま、もう何でもいーわ。黄瀬、勝負受けんの?」

あたしの呼びかけに、展開について来るというよりも置き去りにされないのがやっとって感じの黄瀬が、ようやく反応した。

「んー……なんかよくわからないっスけど。売られた勝負は買う主義なんで、いっスよ」

へぇ。
てっきり嫌だとか言うかと思ってたけど、ちょっと意外だな。

「よーし、そんじゃま、始めよーぜ」

青峰が黄瀬に向かって玉ねぎを放り投げた。

かくして、勝負の火蓋は切って落とされたのであった。


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