2 「な……何でオマエがここにいるんだよ!」 意味わかんない。 今まで誰もここに入ってきたことなんてなかったのに。 よりによって第一号が春日だなんて。 「んー……昼休み津川に用があって夏希ちゃんのクラスに行く途中で夏希ちゃんを見つけてねー。教室行ったら津川がなんかぎゃーぎゃー喚いてて。そんで、夏希ちゃん見かけた方向にちょっと心当たりがあったから来てみたってわけー」 適当に間をはしょられたせいでわかりづらいが、まあ、何となく言いたいことはわかる。 (だけどこいつ、確か今年大学受験のはずだけど、こんなんで論文とか大丈夫なのか?) ……って、 「ちょっと待てよ春日。心当たりって……オマエここのこと知ってたわけ?!」 今の春日の口調だと、明らかにここのことを知ってる風だった。 っていうか、でなけりゃ校内で私を見かけただけでここまで辿り着けるわけないし。 すると春日は、へらりと笑って頷いた。 「知ってるよー。だってオレもここ、昔よく使ってたもん」 奇遇だね、と、いつもの調子で笑う。 嘘だ……そりゃあ学校の敷地だし私の場所ってわけじゃないけど、だからって春日とモロ被りするなんてあんまりすぎる。 「マジかよ……」 「うん、マジ。……それより夏希ちゃん、お腹すいてたりしない?」 確かにさっき一暴れした上に昼飯買い損ねてるから、腹はすっげー減ってる。 だけど、 「……何で知ってるわけ?」 「津川から何となく話聞いてねー。その様子だったら夏希ちゃん、購買でご飯買えなかったんじゃないかなって」 そう言って春日は顔の高さに購買の袋を掲げた。 袋の口からちらっと見えたのは、私の好きなたまごサンド。 一瞬ぐらりと揺らぐ……けど、ここで流されるわけにはいかない。 「あんたに借り、作りたくないんだけど」 「借りなんて思わなかったらいいんじゃない?オレがやりたくてやってるわけだしー?」 だから。と、私の前にたまごサンドとりんごジュースのパックを置いた。 「…………ありがと」 「どーいたしまして」 なんで、こんなことしてるんだろ。 そもそも津川が余計なことさえしなけりゃ今頃は教室で寝てるはずだったのに。 でも、そのおかげで今こうやってるわけで……って、違う。私は何を考えてるんだ。 |