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DVDが始まった。
可愛らしいアニメーションが画面の中で動き始める。

「名作劇場なんて、小学生以来っスね」

「そだね。黄瀬も名作劇場とか見てたんだ」

なんていうか、意外。
どっちかといえば、普通に戦隊モノとか見て真似とかしてそうだと思ってたんだけど。

「あらいぐまラスカルとかハイジは見たっスよ。夏休みの朝とかに」

「あ、あたしもハイジ見た。あのブランコに乗りたい!っていっつも思ってたんだよねぇ」

「夏希らしいっス」

そう言って笑う黄瀬の肩をグーで殴った。黄瀬のくせにあたしを笑うなんて10年早い。

そうやってぐだぐだしているうちに物語は段々と佳境に入り、あたしも黄瀬もいつの間にか無言で画面に見入っていた。
なんていうか……世の中の不条理と理不尽を詰め込んだ作品なのね、フランダースの犬って……。
もっと明るい作品かと思ってたら、真逆の作品じゃないの。

……と、映像が何やら見覚えのあるシーンに差し掛かった。
アニメのランキングとかで必ず出てくる物語のラストシーン、ネロとパトラッシュが天に召される、有名すぎるあのシーンだ。
話の流れを知らないでランキングだけ見てたからなんで感動するのかがわかんなかったけど、始めから通して見た今ならわかる。
っていうか、ぶっちゃけ涙腺がかなりヤバい。と、意識した途端に涙がこぼれ落ちた。
それを皮切りに、ぼろぼろと溢れる涙は止まらない。
ネロとパトラッシュが可哀相すぎてさ。

しかし、あたしはこれで確信した。
これなら黄瀬も涙を流しているだろう。
黄瀬に気付かれないように、そっと携帯を手にし、カメラを起動した。
そして、ゆっくり黄瀬の方に視線を移す……と、


「…………は?」


隣で一緒にDVDを見ていたはずの黄瀬は。
すよすよと小さな寝息を立てて、それはそれは気持ち良さそうに眠っていたのだった。

しかし眠りは浅かったようで、あたしの気配に気付いたのだろう。ぼんやりと目を擦りながら、目を覚ましたのだった。

「あれ……夏希?」

しかし眠たそうだった目は、あたしと目が合った途端に驚きで大きく見開かれた。

「え、ちょっと夏希?!何で泣いてるんスか?!」

「あんたが寝てるからよ!バカじゃないの?!」

半ば八つ当たりのように叫んで黄瀬の肩を本気のグーパンチで殴った。商売道具の顔を狙わなかったことに感謝してほしい。

「さつきの言った通りね。フランダースの犬を見て泣かないなんて人間じゃないわ。つまり黄瀬、あんたのことよ」

話の流れに着いていけてない黄瀬は頭にはてなを浮かべながらも、眠ってしまったことについてはひたすらに謝っていたのだった。




作戦No.1「フランダースの犬」
発案者:緑間真太郎

結果:失敗

敗因:黄瀬の練習疲れを考慮に入れていなかった


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