2 「ごちそうさまでしたー!」 結論からいうと、黄瀬はやっぱりお母さん似だった。特に目元とか。 これでも黄瀬ってモデルとかやってるから女の子が突然行ったら歓迎されないんじゃないかな……なんて思ってたけど、いらない心配だった。 むしろ黄瀬のお母さんの喜びようったらなかった。 (うっかり赤飯でも出て来そうな勢いだった) 今まで数え切れないくらい女の子と付き合ってきたはずだけど、家まで来た子はいないらしい。 ほんとに、なんでこんないいお母さんから黄瀬みたいな捻くれた息子が生まれたんだろう。 きっと黄瀬のお母さんは橋の下で黄瀬に拾われたに違いないわ。 (え、逆だって?そんなことないわよ) 「お粗末さま。夏希ちゃん、ゆっくりしていってね。涼太、帰りちゃんと送っていくのよ」 「はーい」 「わかってるっス。夏希、オレの部屋行こう」 「あ、うん」 黄瀬に促されるままにリビングから出る。 黄瀬の部屋は、2階にあるらしい。 「うち、男ばっかでさ。母さん、女の子が欲しかったみたいだから、夏希が来るって言ったらすっげー喜んでたんスよ」 「ふーん……」 そうなんだ。 聞けば、少し年の離れたお兄さんがいるらしいけど、既に独立してこの家にはいないらしい。 「あ、オレの部屋ここっス。何か飲み物もらってくるから、適当にしてて」 「あ、うん。ありがと」 通された黄瀬の部屋は、思ってたよりは綺麗だった。 床にボールが転がってたり、読みかけの雑誌がちょっと雑然と積んであったりするけど、まあ、これくらいは許容範囲だろう。 「お待たせー。ところで夏希、見たいDVDって何なんスか?」 「あ、うん。DVDね。昨日緑間から借りたんだけどさー、1人で観るのもなんだかなーって」 黄瀬からオレンジジュースを受け取って、代わりにかばんから出したDVDを手渡す。 「フランダースの犬……っスか?」 黄瀬はどうやらフランダースの犬を見たことないらしい。 動物モノっスね〜、なんて言いながら、DVDをデッキにセットしている。 かくして、運命のときは始まった。 |