2 「春日先輩!」 結局のところ。 朝練には本気で滑り込みで間に合ったおかげでなんとか怒られずにすんだ。 (日々の走り込みって大事だと思う。いやマジで) 「んー?どったの津川〜?」 着替えも終わって授業に向かおうとする春日先輩を呼び止めると、先輩はいつもみたいに眠くなるような調子で返事をした。 (この人、ほんとバスケしてるとき以外はユルいなぁ) 「いや、大したことじゃないんですけどね。春日先輩、この土日キャプテンん家に行ったんですか?」 すると春日先輩は不思議そうに瞬きを数回して、首を傾げる。 「えー、オレお前にそんな話したっけー?」 「してないですよー。オレ、今朝朝練来る途中に岩村サン……あ、オレのクラスの方の。に、会って、それで」 「あー、なるほどねー。うん、行ったよー。多分今日の部活でも話すけど、夏のIHに向けてのミーティングをねー」 一応この正邦高校。バスケでは東京の三大王者って言われてる強豪校だったりする。 だからこそと言うべきか、ミーティングにも余念ない。 (オレはミーティングはそんな好きじゃないけど) 「なにー、津川お前、夏希ちゃんと話すほど仲良かったっけー?」 「や、違いますよ。朝たまたま見かけてオレが話し掛けたら、休み中に春日先輩が来ていらいらしてるから話し掛けんな、って」 「あ〜、なるほどねー」 ふうん、と唸った春日先輩。 しかし次の瞬間、あれ、と不思議そうな声をあげた。 「そういえば夏希ちゃん……なんで、朝練前のそんな時間に学校に来てたんだろー?」 言われてみれば。 彼女は確か帰宅部だったはずだし、特に委員会とかをしてるわけでもない。 でも、 「岩村サン、朝来るのはわりと早いですよ。教室にはあんまいないですけど」 実際、オレが朝練前に彼女を見かけたのは、今日が初めてってわけでもない。 てっきり何かあるのかと思えば、教室に立ち寄った形跡はなく、むしろ教室に入ってくるのは朝練を終えたオレより遅い始業のチャイムが鳴った後だ。 「ん〜……まあいいや。津川、そろそろ行かんと遅刻するぜー」 言われて時計を見れば、始業5分前。 春日先輩はスポーツバッグをからうと、先に更衣室から出て行ったのだった。 その後オレも教室に行くと、やっぱりというか、岩村サンの姿はなかった。 今日も教室には寄らずにどこかに行ってたらしい。 一回気にし出すと気になるよなー。 うっし、昼休みにでも聞いてみよう! |