3 「探したのだよ。こんなところにいたのか、黒子」 何かを伝えようとした黒子の言葉は、さらに別の闖入者によって遮られた。 「こんなところとは失礼ね、緑間」 「時枝。お前こそ何なのだよ。お前のくだらない計画に付き合わせるほど、黒子は暇ではないのだよ」 くだらない計画で悪かったわね。 でも、あたしとしては大真面目なんだから。 「それで、緑間君。僕に何か用ですか?」 あたしと緑間の間で火花が散ったのを察した黒子がすかさず口を挟んだ。 相変わらず空気を読むスキルが高い。 緑間はふん、と鼻を鳴らしてあたしを一瞥すると、すぐに黒子の方に視線を移した。 「次の試合についてのミーティングだ。時間も押してるから早くするのだよ」 「わかりました。すぐに行きます」 「……ねえ!」 あたしの前を去ろうとする黒子と緑間の背中に呼びかける。 「あんたたちなら、黄瀬を泣かせようと思ったらどうする?」 てっきりその質問は無視される……と、思ったのだが。 しかし、意外にも緑間はぴたりと足を止めると、そんなものは簡単だとも言いたげな視線を寄越した。 「手段を問わず手っ取り早く泣かせるのならば、そんなものは簡単なのだよ。感動するような映画でも見せてやればいい」 ……自信満々に言い切ったそのアイデアは、あまりにも、あたしの考えてた路線と違いすぎて、そういや思いつかなかったわ。 そうね、まあ、黄瀬の泣き顔見るってだけなら、まあ、それでも…… 「……これを貸してやるのだよ」 そう言って緑間は、あたしに何かを投げて寄越した。 「俺の今日のラッキーアイテムだが、今日はもうミーティングだけだからな。特別に貸してやろう」 渡されたそれは、少し薄いプラスチックケース。 「……フランダースの犬?」 昔にそういえば見たような記憶もあるんだけど、あんまりよく覚えてない。 これって感動するような話だっけ? (動物系だし、ほのぼのとかじゃないの?) 「レンタル期限はあさってまでだからな。それまでに見るのだよ」 ……って、レンタルのDVDかよ! てっきり緑間ん家の私物かと思ったら違うのかよ! 又貸しすんなよ!と至極正論のツッコミをすべきか、それともこのままDVDを借りて黄瀬に見せてみるべきか。 悩んだあたしは、結局、自分でDVDを借りに行くのが面倒。と、いう理由で、緑間から借りたDVDをバッグの中にしまい込んだ。 (よいこの皆は真似をしないように。くれぐれも) んっと、今日は黄瀬が捕まんないからなー。 明日の帰りとか、かなぁー。 とりあえず、黄瀬に明日うちんちか黄瀬んちに寄れるか聞いてみるかな。 |