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「彼女、昔からあんなんだったわけ?」

「いや……小学生くらいまではあんなじゃなかったな。むしろよく遊んでいた気がする」

数年前の記憶を手繰りながら、とつとつと岩村は話し出した。

「……中学に上がった頃だ。あいつが突然口を利かなくなったのは。原因を聞こうとしても、頑として口を割らない。それで、その辺りからずるずるとそのまま来てしまったわけなんだが」

岩村も岩村で頑固だからね〜。
なんて言ったら、睨まれるだろうけど。

「……夏希は、何か言っていたのか?」

「気になる〜?」

なんて、ちょっと意地悪で焦らしてみたら。
その厳つい顔に、少しシワが刻まれた。

「いや……あいつがバスケ部員と口を利くなんて、何があったのかと思っただけだ」

ふーん。意地っ張り。
話しててなんとなく思ったけど、やっぱり岩村と夏希ちゃん、根本のところでは、やっぱり兄妹だね〜。
なんとなく似てるわー。

「まあ、オレも大したことは話してないよ〜?」

嘘だけど。
あの会話の内容をそのまま話せば、間違いなく夏希ちゃんは怒るだろう。
だから、とっさにそう誤魔化した。

せっかく彼女が「オレのことは嫌いではない」と言ったのだ。
わざわざ自分から、嫌われに行く必要はない。
(オレだって、気になる女の子から嫌われるような、そんな自虐的な趣味はない)

「……まあ、何だっていいが。お前、夏希には手を出すなよ」

まるでオレの心を見透かしたような岩村の言葉に、今度はオレが驚いた。

「あららー、岩村ってばエスパー?」

すると岩村はまさか本当にそうだとは思ってなかったんだろう。
顔を赤くしたり青くしたり引き攣らせたりと、ちょっと忙しそうにした。

「おい……春日、まさかお前、」

「うーん。そうだよね〜……ってことは、もしかしたらオレ、岩村のことを義兄さんって呼ばなきゃいけんのかー。それは嫌だなぁ」

「春日!!」

パニック起こして口をぱくぱくさせてる岩村(超珍しい)を写メに納めるべきか否か悩んでいると、部室の外がざわつき始めた。
他の部員が来たんだろう。
残念ながらと言うべきか、今日のところはこの話はこれで仕舞い……だが。



よほど放心したんだろう岩村が、とんちんかんな練習メニューを指示して部員たち(主に津川)に気味悪がられたのは……まあ、余談と言えなくも、ない。


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