2 「彼女、昔からあんなんだったわけ?」 「いや……小学生くらいまではあんなじゃなかったな。むしろよく遊んでいた気がする」 数年前の記憶を手繰りながら、とつとつと岩村は話し出した。 「……中学に上がった頃だ。あいつが突然口を利かなくなったのは。原因を聞こうとしても、頑として口を割らない。それで、その辺りからずるずるとそのまま来てしまったわけなんだが」 岩村も岩村で頑固だからね〜。 なんて言ったら、睨まれるだろうけど。 「……夏希は、何か言っていたのか?」 「気になる〜?」 なんて、ちょっと意地悪で焦らしてみたら。 その厳つい顔に、少しシワが刻まれた。 「いや……あいつがバスケ部員と口を利くなんて、何があったのかと思っただけだ」 ふーん。意地っ張り。 話しててなんとなく思ったけど、やっぱり岩村と夏希ちゃん、根本のところでは、やっぱり兄妹だね〜。 なんとなく似てるわー。 「まあ、オレも大したことは話してないよ〜?」 嘘だけど。 あの会話の内容をそのまま話せば、間違いなく夏希ちゃんは怒るだろう。 だから、とっさにそう誤魔化した。 せっかく彼女が「オレのことは嫌いではない」と言ったのだ。 わざわざ自分から、嫌われに行く必要はない。 (オレだって、気になる女の子から嫌われるような、そんな自虐的な趣味はない) 「……まあ、何だっていいが。お前、夏希には手を出すなよ」 まるでオレの心を見透かしたような岩村の言葉に、今度はオレが驚いた。 「あららー、岩村ってばエスパー?」 すると岩村はまさか本当にそうだとは思ってなかったんだろう。 顔を赤くしたり青くしたり引き攣らせたりと、ちょっと忙しそうにした。 「おい……春日、まさかお前、」 「うーん。そうだよね〜……ってことは、もしかしたらオレ、岩村のことを義兄さんって呼ばなきゃいけんのかー。それは嫌だなぁ」 「春日!!」 パニック起こして口をぱくぱくさせてる岩村(超珍しい)を写メに納めるべきか否か悩んでいると、部室の外がざわつき始めた。 他の部員が来たんだろう。 残念ながらと言うべきか、今日のところはこの話はこれで仕舞い……だが。 よほど放心したんだろう岩村が、とんちんかんな練習メニューを指示して部員たち(主に津川)に気味悪がられたのは……まあ、余談と言えなくも、ない。 |