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……やっぱり、誰かに声をかけてくるべきだったでしょうか。

「コボ!コボコボ!」

指輪は、裏山に上って少し行ったところですぐに見付けました。
しかし……です。
そこにいたのは指輪だけではなく、キラキラ光るものに興味を示したのでしょうか……モンスターが指輪を取り囲んでいます。
この間のガーゴイルほど強くはなさそうですが……なにしろ、数が多いです。

ドウシマショウ……敵は三匹。そう、強くはなさそうです。
もしかしたら、矢を一本打ち込んで威嚇すれば、驚いて逃げてくれるかもしれません 。
と、いうかそうなって欲しいというのがわたしの本音ですが。
……ともかく、やるしかありません。
そっと弓に手を伸ばした、そのときです。

「そこのあなた、耳をふさぎなさい!」

凜、とした声が、辺りに響きました。
突然のことに、反射的に手で耳をふさいだ、次の瞬間。
キィ……ン、という甲高いような頭に響くような……ともかく、凄まじい音波がわたしと、指輪の周りにいたモンスターを襲いました。

「……!」

恐る恐る目を開けると、目の前にはノビたモンスターたち。
そして、黄色い服に長い髪の……お兄さん?

「危ないところでしたね」

にっこりと、その人は笑って言いました。

「あ……えっと。ありがとうございます」

「たまたま近くを通り掛かりましたので。これも何かのご縁でしょう」

「あの、どうしてこんなところに来たですか?」

もうすっかり夕方の裏山です。
特に何かあるわけではなさそうですし……。

「私は吟遊詩人のミーユ。詩を考える時は人気の少ないところに来ているのですが……裏山に来たら、ちょうどあなたがいた、というわけですよ」

「吟遊詩人さんですか」

そういえば、広場で一度だけ見かけたような気もします。
あのときはちゃんと聞いていませんでしたが……今度見つけたら、聞いてみることにしましょう。

「あなたは、酒場にいるヴィオレット、でしたか?」

「……!なんで、知ってるです?」

わたし、ミーユと会うのはこれが初めてのはずです!
今、わたしは自分からは名乗っていませんし……

「酒場にもたまに顔を出しますので、マスターに伺いました。新しい冒険者が来た、と。……ヴィオレット。自分の力が未熟なうちは、なるべく仲間を連れて行くようにしなさい。それが、どんな依頼であっても」

「はい……」

未熟……ですか。
この短い期間の間に、またも自分の力不足を痛感しました。

「では、私はこれで」

ひらり、とローブの裾を翻して、ミーユは去っていきました。
しばらく呆然とその後ろ姿を見送っていましたが、そういえば夕焼けに夜色が混ざってきました。
のろのろと指輪を拾うと、指輪はかなり汚れてしまっています。
マスターから預かったときは、あんなに綺麗でしたのに。
そう思うとまた、がくりと肩が落ちたのでした。


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