7 ……やっぱり、誰かに声をかけてくるべきだったでしょうか。 「コボ!コボコボ!」 指輪は、裏山に上って少し行ったところですぐに見付けました。 しかし……です。 そこにいたのは指輪だけではなく、キラキラ光るものに興味を示したのでしょうか……モンスターが指輪を取り囲んでいます。 この間のガーゴイルほど強くはなさそうですが……なにしろ、数が多いです。 ドウシマショウ……敵は三匹。そう、強くはなさそうです。 もしかしたら、矢を一本打ち込んで威嚇すれば、驚いて逃げてくれるかもしれません 。 と、いうかそうなって欲しいというのがわたしの本音ですが。 ……ともかく、やるしかありません。 そっと弓に手を伸ばした、そのときです。 「そこのあなた、耳をふさぎなさい!」 凜、とした声が、辺りに響きました。 突然のことに、反射的に手で耳をふさいだ、次の瞬間。 キィ……ン、という甲高いような頭に響くような……ともかく、凄まじい音波がわたしと、指輪の周りにいたモンスターを襲いました。 「……!」 恐る恐る目を開けると、目の前にはノビたモンスターたち。 そして、黄色い服に長い髪の……お兄さん? 「危ないところでしたね」 にっこりと、その人は笑って言いました。 「あ……えっと。ありがとうございます」 「たまたま近くを通り掛かりましたので。これも何かのご縁でしょう」 「あの、どうしてこんなところに来たですか?」 もうすっかり夕方の裏山です。 特に何かあるわけではなさそうですし……。 「私は吟遊詩人のミーユ。詩を考える時は人気の少ないところに来ているのですが……裏山に来たら、ちょうどあなたがいた、というわけですよ」 「吟遊詩人さんですか」 そういえば、広場で一度だけ見かけたような気もします。 あのときはちゃんと聞いていませんでしたが……今度見つけたら、聞いてみることにしましょう。 「あなたは、酒場にいるヴィオレット、でしたか?」 「……!なんで、知ってるです?」 わたし、ミーユと会うのはこれが初めてのはずです! 今、わたしは自分からは名乗っていませんし…… 「酒場にもたまに顔を出しますので、マスターに伺いました。新しい冒険者が来た、と。……ヴィオレット。自分の力が未熟なうちは、なるべく仲間を連れて行くようにしなさい。それが、どんな依頼であっても」 「はい……」 未熟……ですか。 この短い期間の間に、またも自分の力不足を痛感しました。 「では、私はこれで」 ひらり、とローブの裾を翻して、ミーユは去っていきました。 しばらく呆然とその後ろ姿を見送っていましたが、そういえば夕焼けに夜色が混ざってきました。 のろのろと指輪を拾うと、指輪はかなり汚れてしまっています。 マスターから預かったときは、あんなに綺麗でしたのに。 そう思うとまた、がくりと肩が落ちたのでした。 |