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「リュッタ?いや……たまに来るが、今日はまだ見てないな」

「そうですか……どうも、ありがとうございます」

「悪いな、力になれなくて」

あれからすぐに広場を出たわたしは、思いつく限りの食堂や酒場を走り回り、リュッタを探しました。
しかし、どこにも立ち寄った形跡はありません。

スラムの酒場を出たわたしは、大きく溜息をつきました。
ふと、空を見上げれば、うっすらとオレンジに染まりかけています。
早くリュッタを見付けなければいけません。

「あとは、高級酒場と……マスターの酒場、ですね」

マスターの酒場は……後回しにしましょう。
ごめんなさい、マスター。
心の中で謝って、わたしはひとまず高級酒場へ走りました。

「あ……あのっ!」

「あら、どうしたのかしら、あなた?」

高級酒場へ飛び込んだわたしを迎えたのは、鮮やかなピンクの美人さんでした。

「ここは富と名声を持つ貴族のための酒場よ。あなた、見たところまだコロナで手柄を立てていないようだけれど……?」

そうでした……大通りに近いとはいえ、ここも行政地区の中です。
本来なら、まだわたしみたいな新米は入れないのです。

「はい……今、ちょうどお使いで。あの、お姉さん、」

「サラ、よ」

「サラ、リュッタを見ませんでしたか?!」

わたしの剣幕に驚いたのか、サラは数回瞬きをしました。

「リュッタ……?そういえば今日はまだ見てないわね」

「そう、ですか……」

やはり、マスターのところでしょうか……自業自得とはいえ、少し、気が重いです。
するとサラは、そういえば、と何かを思い出したように呟きました。

「もしかしたら……ダルトンさんのところかもしれないわね。ダルトンさん、すごいお菓子マニアでリュッタとも仲がいいから」

「ダルトン?」

「ダルトンさんはね、コロナで一番のお金持ちの貴族よ。この酒場をもう少し奥に行ったところにある大きい館がダルトンさんのお屋敷よ」

「ありがとうございます、サラ!」

サラのくれた情報は、とてもありがたいものでした。

「今度はお客様として来てね、かわいい冒険者さん」

嵐のような来訪にも関わらず笑顔で送り出してくれたサラに手を振って、次はダルトンのお屋敷目指して走りました。



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