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「うー……わたし、そんなに日頃の行いが悪いのでしょうか?」

なんということでしょうか……先程診療所に行ったはいいのですが、なんと、そこでも入れ違ってしまったのです。
これは、何かに呪われてるとしか思えないです……!
(いや、実際呪いがかかっているわけですが、それにしてもです)

アエリア曰く、ユリアの怪我はたいしたことないのですぐに診療所を出て、広場で占いをしてもらいに行ったようです。
本当にすぐの入れ違いだったようなので、急げばきっと広場で追いつけるはずなのです。

いつの間にか指輪を手に持って走り、見慣れた広場が見えた、そのときでした。

「あ……っ!」

がつ、と何かにつまずきました。
気付いたときにはわたしの体は重力に従い、そして。

「あぅうう……。あ、いたたた、」

石畳に勢いよく挨拶をしてしまったのです。
うぅ……まだ完治していない傷に響きます。

「君、大丈夫かい?」

地面に仲良くはいつくばるわたしに、手が差し延べられました。
顔を上げれば、広場でよく見るお兄さんでした。

「はい、大丈夫なのですよー。ありがとうございます」

起き上がって足元を見てみれば、どうやら石畳が剥がれたところにつまずいてしまったようです。

しかし、幸いと言うべきでしょうか。
膝を軽く擦りむいただけのようです。
コロナのババがいる占いテントはもう目の前です。
早く指輪を……、

「…………あ、れ?」

わたし、さっきまで確かに指輪を手に持っていました。
でも、右手にも左手にも指輪がありません。

「うそぉおおお?!」

ど、どどどどどうしましょう!
あれほどマスターになくさないようにと言われたのに、指輪をなくしてしまいました……!
きっとさっき転んだときです……!

どうしましょう、どうしましょう……!
辺りを探してみますが、指輪らしいものは落ちていません。
こんなことなら、手に持たずにポケットに入れておくべきでした……。
マスターに何て言えばよいのでしょうか……。

「あの、どうかされましたか?」

指輪も見つからずに途方に暮れていると、誰かに声をかけられました。
わたしに声をかけたのは、いつも占いテントの近くにいる女の子です。

「はい……実は、届け物の指輪を先程転んだ拍子になくしてしまいまして」

改めて口に出すと、更に気が滅入ります。
しかし女の子(確か、カリンという名前だったはずです)は少し考えると、もしかしたら、と呟きました。

「指輪、ですか……もしかしたら、わたしがさっき見た光はそれかもしれませんね」

「ほ……ほんとですか?!」

「え、えぇ。確か、リュッタの頭の方に飛んで行ったように思うのですが……」

「リュッタ、ですか……?」

「ええ、先程まで広場にいたホビットの少女です。もうすでにどこかに行ってしまったようですが……」

つまり、今度はユリアではなくリュッタを探さなければいけないようです。

「あの、リュッタの行き先に心当たりはないですか?!」

「さあ、リュッタは気まぐれですから……あ、でも、食べ物のあるところにいるかもしれませんね」

食べ物……ですか。

「わかりました……ありがとうございます」

とりあえず、今は少しの可能性でも縋らなければいけません。
リュッタを探すということで頭がいっぱいになったわたしの耳に、

「おばあさまがおっしゃっていた、大きな運命を背負う方……お気をつけて」

というカリンの呟きが入ってくることは、ありませんでした。


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