4 「うー……わたし、そんなに日頃の行いが悪いのでしょうか?」 なんということでしょうか……先程診療所に行ったはいいのですが、なんと、そこでも入れ違ってしまったのです。 これは、何かに呪われてるとしか思えないです……! (いや、実際呪いがかかっているわけですが、それにしてもです) アエリア曰く、ユリアの怪我はたいしたことないのですぐに診療所を出て、広場で占いをしてもらいに行ったようです。 本当にすぐの入れ違いだったようなので、急げばきっと広場で追いつけるはずなのです。 いつの間にか指輪を手に持って走り、見慣れた広場が見えた、そのときでした。 「あ……っ!」 がつ、と何かにつまずきました。 気付いたときにはわたしの体は重力に従い、そして。 「あぅうう……。あ、いたたた、」 石畳に勢いよく挨拶をしてしまったのです。 うぅ……まだ完治していない傷に響きます。 「君、大丈夫かい?」 地面に仲良くはいつくばるわたしに、手が差し延べられました。 顔を上げれば、広場でよく見るお兄さんでした。 「はい、大丈夫なのですよー。ありがとうございます」 起き上がって足元を見てみれば、どうやら石畳が剥がれたところにつまずいてしまったようです。 しかし、幸いと言うべきでしょうか。 膝を軽く擦りむいただけのようです。 コロナのババがいる占いテントはもう目の前です。 早く指輪を……、 「…………あ、れ?」 わたし、さっきまで確かに指輪を手に持っていました。 でも、右手にも左手にも指輪がありません。 「うそぉおおお?!」 ど、どどどどどうしましょう! あれほどマスターになくさないようにと言われたのに、指輪をなくしてしまいました……! きっとさっき転んだときです……! どうしましょう、どうしましょう……! 辺りを探してみますが、指輪らしいものは落ちていません。 こんなことなら、手に持たずにポケットに入れておくべきでした……。 マスターに何て言えばよいのでしょうか……。 「あの、どうかされましたか?」 指輪も見つからずに途方に暮れていると、誰かに声をかけられました。 わたしに声をかけたのは、いつも占いテントの近くにいる女の子です。 「はい……実は、届け物の指輪を先程転んだ拍子になくしてしまいまして」 改めて口に出すと、更に気が滅入ります。 しかし女の子(確か、カリンという名前だったはずです)は少し考えると、もしかしたら、と呟きました。 「指輪、ですか……もしかしたら、わたしがさっき見た光はそれかもしれませんね」 「ほ……ほんとですか?!」 「え、えぇ。確か、リュッタの頭の方に飛んで行ったように思うのですが……」 「リュッタ、ですか……?」 「ええ、先程まで広場にいたホビットの少女です。もうすでにどこかに行ってしまったようですが……」 つまり、今度はユリアではなくリュッタを探さなければいけないようです。 「あの、リュッタの行き先に心当たりはないですか?!」 「さあ、リュッタは気まぐれですから……あ、でも、食べ物のあるところにいるかもしれませんね」 食べ物……ですか。 「わかりました……ありがとうございます」 とりあえず、今は少しの可能性でも縋らなければいけません。 リュッタを探すということで頭がいっぱいになったわたしの耳に、 「おばあさまがおっしゃっていた、大きな運命を背負う方……お気をつけて」 というカリンの呟きが入ってくることは、ありませんでした。 |