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行政地区と学術地区のちょうど中間に、神殿はあります。
そういえば前を通ったことはありますが、中に入るのはこれが初めてかもしれません。

他とは違う、何と言うのでしょうか……そう、神聖な雰囲気です。
その静寂を破らないよう、そっと扉を開けると。

「わっ!」

まさか、すぐそこに人がいるとは思わなかったので、つい大きな声が出てしまいました。
アルターみたいに筋肉質の、青い神官衣を着たお兄さんです。

「あ、すみません。大丈夫でしたか?」

「はい、大丈夫なのですよ。ちょっとびっくりしただけなのです」

「すみません、驚かせてしまって。ちょうど、扉の掃除をしていたものでしたから」

そう言ってお兄さんは、少し手に持った雑巾を上げました。

「こちらこそ、ごめんなさいです」

「いえいえ。そういえば、あなたはあまり見ない方ですね。冒険者の方ですか?」

「はいっ!酒場のマスターにお世話になってるです。レンジャーのヴィオレットですよ!」

「ヴィオレットさんですか。私はこの神殿に仕える、モンクのシェリクといいます。もし、冒険に必要でしたらお声かけ下さい。困った人を助けるのも、私たち神殿で働く者の勤めですから」

そう言うとシェリクは、にこりと笑いました。
温かい、優しい笑顔です。
聞けばモンクというのは、神様に仕えるので剣などは使わないけれど、拳を使った武術で戦うのだそうです。
そして、今まで出会った人たちと違うのは、なんと回復魔法も使えるというのです!

「はいっ!よろしくお願いします、シェリク!」

「こちらこそ、よろしくお願いします。……そういえばヴィオレットさん、今日はどういったご用件で神殿においでに?」

は……っ!
そうでした、新しい仲間ができたことでついうっかりしていましたが、わたしは今お使いの真っ最中です。

「あの、わたし、ユリアを探してここまで来たですが……ユリアはここにいますか?」

「ユリアさん、ですか。ユリアさんなら、先程確かに来られましたが……」

「ほんとですかっ」

しかし、シェリクは少し眉を下げました。

「ですが、お祈りを終えられて帰られる際に足をくじいておられましたので……もしかしたら、診療所へ向かったかもしれませんね」

なんということでしょう……またしても、入れ違いなのです。
診療所、ですか。
この間無理を言って出てきたので少し行きづらいですが……仕方ありません。

「ありがとうございます、シェリク」

「いえいえ。また今度はゆっくりいらしてくださいね。お気をつけて」

そう言って手を振るシェリクに見送られ、わたしは診療所へ向かうことにしました。


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