2 「あ……あのっ、すいません!」 しかし、わたにしはユリアに指輪を届けるという使命があります。 門の前に立っていた金髪の騎士さんに声をかけると、騎士さんは少し首を傾げました。 「貴女は?見たところ、冒険者のようですが。政務室に、何の御用でしょうか?」 「はい、酒場のマスターに頼まれて、ユリアに指輪を届けに来ました!」 すると騎士さんは、なるほどと頷いたあと、少し眉を下げて言いました。 「そうでしたか。話は伺っています。しかし、ユリアさんは先程出掛けられたきり、まだ戻られていません。申し訳ありませんが、また時間を置いて出直していただけますか?」 お出かけ中、でしたか……! それは、予想外でした。 どうしましょう……ユリアのいるところがわかれば、もしかしたらお届けできるでしょうか。 「あの、ユリアがどこに行ったかわかるですか?」 「申し訳ありません、私は行き先までは伺っていません」 手がかりもなし、です。 仕方ありません。 依頼中に不本意ではありますが、少し街で時間を潰すことにしましょう。 一度引き返そうとした、そのときでした。 「はぁ……デューイ様、今日も凛々しくお仕事をなさっているのですね」 いつの間にやら、わたしの近くに一人のお姉さんがいました。 金髪の騎士さん(デューイ、というようです)を、なにやらじっと見つめています。 「あのー……、」 ダメでもともとです。 お姉さんにユリアの行き先を知らないか、聞いてみましょう。 「あら、何よあなた。あなたもデューイ様のファンなの?」 「あの、いえ、」 「素敵よねぇ、デューイ様。まだ年もお若いのに、騎士団の隊長も任されているだなんて……それに、あなた見たことある?デューイ様の槍裁きは本当に見事なんだから!」 こ、このままだとわたしが口を挟む隙もありません……! 仕方ありません、あまりお話の最中を遮りたくはないのですが……。 「あの、違います!わたし、ユリアに用があってここに来たのですが……お姉さん、ユリアの居場所知りませんか?」 するとお姉さんは、意外そうにぱちぱちと瞬きをしました。 「なんだ、あなたデューイ様のファンじゃないの。ユリアさんなら、神殿に入っていくのを見たわよ。お祈りに行ったんじゃないかしら?」 お祈り、ですか。 確か神殿は学術地区にあったはず……と、いうことは入れ違いになってしまったのですね。 「わかりました!ありがとうございます、お姉さん!」 思ったよりも早くに手がかりが見つかりました。 これで、あとはユリアに指輪を渡せば依頼は完了なのです。 そうとわかれば、わたしは神殿を目指して、走りはじめたのでした。 |