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「あ……あのっ、すいません!」

しかし、わたにしはユリアに指輪を届けるという使命があります。
門の前に立っていた金髪の騎士さんに声をかけると、騎士さんは少し首を傾げました。

「貴女は?見たところ、冒険者のようですが。政務室に、何の御用でしょうか?」

「はい、酒場のマスターに頼まれて、ユリアに指輪を届けに来ました!」

すると騎士さんは、なるほどと頷いたあと、少し眉を下げて言いました。

「そうでしたか。話は伺っています。しかし、ユリアさんは先程出掛けられたきり、まだ戻られていません。申し訳ありませんが、また時間を置いて出直していただけますか?」

お出かけ中、でしたか……!
それは、予想外でした。
どうしましょう……ユリアのいるところがわかれば、もしかしたらお届けできるでしょうか。

「あの、ユリアがどこに行ったかわかるですか?」

「申し訳ありません、私は行き先までは伺っていません」

手がかりもなし、です。
仕方ありません。
依頼中に不本意ではありますが、少し街で時間を潰すことにしましょう。

一度引き返そうとした、そのときでした。

「はぁ……デューイ様、今日も凛々しくお仕事をなさっているのですね」

いつの間にやら、わたしの近くに一人のお姉さんがいました。
金髪の騎士さん(デューイ、というようです)を、なにやらじっと見つめています。

「あのー……、」

ダメでもともとです。
お姉さんにユリアの行き先を知らないか、聞いてみましょう。

「あら、何よあなた。あなたもデューイ様のファンなの?」

「あの、いえ、」

「素敵よねぇ、デューイ様。まだ年もお若いのに、騎士団の隊長も任されているだなんて……それに、あなた見たことある?デューイ様の槍裁きは本当に見事なんだから!」

こ、このままだとわたしが口を挟む隙もありません……!
仕方ありません、あまりお話の最中を遮りたくはないのですが……。

「あの、違います!わたし、ユリアに用があってここに来たのですが……お姉さん、ユリアの居場所知りませんか?」

するとお姉さんは、意外そうにぱちぱちと瞬きをしました。

「なんだ、あなたデューイ様のファンじゃないの。ユリアさんなら、神殿に入っていくのを見たわよ。お祈りに行ったんじゃないかしら?」

お祈り、ですか。
確か神殿は学術地区にあったはず……と、いうことは入れ違いになってしまったのですね。

「わかりました!ありがとうございます、お姉さん!」

思ったよりも早くに手がかりが見つかりました。
これで、あとはユリアに指輪を渡せば依頼は完了なのです。

そうとわかれば、わたしは神殿を目指して、走りはじめたのでした。


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