6 きぃ、と扉を押すと、中で話をしていた三人……マスター、アルター、そしてマーロが一斉にこちらを向きました。 「ヴィオレット!」 「ヴィオ!お前、怪我は?!まだ包帯ぐるぐる巻きじゃねぇか!」 「あは……これくらい大丈夫、なのですよ。アエリアも傷は深くないと言っていました」 「だからってお前……まあ、いいや。とにかく、無事でよかった」 呆れた様子のアルターとマーロでしたが、やがて安心したように少し笑ってくれました。 「アルターもマーロも、本当にありがとうございます!でも、どうして……?」 わたしの疑問に答えたのは、アルターでした。 「お前がいつまで待っても裏山に来ないからよ。嫌な予感がして、酒場に行ってみたんだ。そしたら、マスターがお前をレーシィ山に行かせたって言うじゃないか。レーシィ山も以前はそうでもなかったんだが、最近妙に強い魔物が住み着いちまってて、それで心配になって行ってみたんだよ」 「そうでしたか……本当に、何とお礼を言ってよいのやら……!」 「オレって頼りになるだろ?」 「はい!アルターはとても頼りになります!」 「へへ、惚れてもいいんだぜ」 アルターがそう言った途端、マーロから何とも言えない冷たい視線が飛んだのは、多分……気のせいではありません。 しかしすぐにいつもの表情に戻りました。 「……とにかく。これからは冒険に行くときは、おれがついて行ってやるから」 「おいおい、オレたち、だろ?マーロ。ま、そういうこった!しばらくはゆっくり休んで、剣の練習はまた今度一緒にしようぜ!」 「……。とりあえず、ヴィオレットの顔も見たし、おれはそろそろ学院に戻るよ」 「オレもアレックスに剣教える約束してるから、そろそろ行くな」 ゆっくり休めよ、と言い置いて、アルターとマーロは酒場から出ていきました。 見送るわたしの背に、マスターが声をかけました。 「悪かったな、ヴィオレット。レーシィ山にバケモノが出るなんて知らなかったんだよ。知ってたらお前を行かせたりはしなかったんだが」 「いえ!こちらこそ、キノコを採って来れなくてごめんなさい、マスター」 ぺこり、と頭を下げれば、マスターの大きな手がくしゃくしゃと頭を撫でました。 「いや、それは大丈夫だよ。本当に悪かったな、見舞金も兼ねて報酬は払わせてもらうぜ」 「い、いえ!それは受け取れないです!」 依頼を失敗させてしまったわたしには、受け取る資格はありません。 しかしマスターは笑ってわたしにはお金に握らせました。 「気にすんなって。これを糧に、また次から頑張ってくれりゃいいさ」 な、と優しく頭を撫でるマスターの言葉に。 「う……うぅ……あ、ありがとうございます、マスター」 わたしはただ、ぼろぼろと涙を流すことしかできませんでした。 わたしはまだまだ未熟です。 けれど、これから強くなります。 アルターやマーロに負けないくらい、強く……強く。 そう、固く心に誓いました。 |