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「――……はっ!」

何やら長いような短いような……そんな、不思議な夢を見ていました。

夢の中でラドゥの言った通り、わたしはまだまだ未熟です。
もっと……もっと、力をつけなくては、呪いを解くどころか、手掛かりを見つけることさえ……!


「――気が付きましたか?」

コトリ、と横に何かを置く音がしました。
花瓶……?
辺りをよく見てみると、わたしの部屋……では、ないようです。

「はじめまして、かしら?私はアエリア。そして、ここは診療所。アルターさんとマーロさんがあなたを慌てて運び込んで来たときにはどうしたのかと驚いたわ」

「そう、ですか……」

あの二人に助けてもらったのは、やはり夢ではありませんでした。
よかった……よかった、です。

「血はたくさん出ていたけれど、幸い急所は外れていたしそんなに深い傷ではありません。数日もすれば、回復するでしょう」

「そうですか……ありがとうございます、アエリア」

「ヴィオレットさん?!あなた、まだ安静にしてなくては……!」

起き上がろうとしたわたしを、慌てて制止するアエリア。
しかしわたしには時間がないのです。
いつまでも寝ているわけにはいかないのです。

「……わかりました」

何かを察してくださったのでしょう。
アエリアは小さく溜息をつきました。

「いいですか、ヴィオレットさん。深くなかったとはいえ、あなたの怪我は相当のものでした。当分は、くれぐれも無理は禁物ですよ」

「はい、ありがとうございます」

動かす度にぎしぎし痛む体をなんとか起こして、わたしは診療所をあとにしました。
診療所はどうやら学術地区にあるようで、何となく見覚えのある道を通りながら、わたしは酒場へと帰り着いたのでした。

「依頼……失敗してしまいましたね」

マスターにも謝らなくてはいけません。
しばらく扉の前で立ち止まったままでしたが、いつまでもここに立っているわけにもいきません。


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