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「じゃあ、ヴィオレット。ここをまっすぐ行ったところにキノコは生えてるよ。僕はあっちに用があるから、ここでお別れだね」

「はい!どうもありがとうございましたっ」

気をつけてね、と言いながら手を振るヴィクタを見送り、わたしはキノコが生えているというところを目指して進みはじめました。
太陽を見上げれば、まだお昼を少し過ぎた頃でしょうか。
これなら、夕方には帰ることができそうです。

「しかし、美味キノコとはそれほどまでにおいしいのでしょうか……一度、食べてみたいものです」

少し多めに持って帰って食べてみましょうか。
そう、まだ見ぬキノコに思いを馳せながら歩いていた、そのときです。

「……あっつ、っ?!」

ひゅん、と風を切って、顔の横を何かが通りすぎていきました。
一体、何が……?

それが飛んできた方に視線を向ける……と。

「……っ!ま、魔物……?!」

マスターは、レーシィ山には魔物はいないと言っていました。
だけど……だけど、今わたしの目の前にいるのは、紛れも無く。

「あ……う、」

どうしましょう……逃げたら、多分、後ろを向いた途端に襲われます。そう、直感が告げています。
だけど……だけど、わたしの腕で果たして勝てるのでしょうか……?

悩んでいるうちに、魔物の横に炎が生まれました。
さっきわたしの隣を飛んで行ったのも、きっとあれでしょう。

……やるしか、ありません。

「……いくですよ、」

弓を構え、矢を番えます。
意識を一点に集中させて解き放つと同時に、魔物の炎もわたしを目掛けて放たれました。

「……ぐ、!」

間一髪、急所は外したみたいですが……しかしこの軽装ではあまり長い間防げそうにありません。

迷ってる暇はありません。
早く、次の矢を……っ、

「きゃあっ!!」

二本目の矢に手をかけたと同時に、目の前に魔物の姿が。
そして、

「が……っ、は!」

振り下ろされる爪。
視界に広がる赤。
体中が熱くて痛い。
わたし……ここで死んでしまう、でしょうか。

ただ横たわるわたしは、魔物にとっては格好の獲物でしょう。
わたし、魔物に食べられてしまうでしょうか……?

とどめを刺そうと魔物が再び爪を振り上げたのが視界の端に映りましたが、体は言うことを聞いてくれません。

逃げ、なきゃ……

だんだんと虚ろになる意識に沈み、目を閉じた、ときでした。


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