2 「あのー、すみません」 右の初心者用の道を、牛さんと牛飼いのおじさんが塞いでしまって通ることができません。 「ああ、お嬢ちゃん。すまないね、牛が往生しちまってねぇ。山頂まで行きたいなら、悪いが向こうの道から行ってくれないかい?」 「あ、えっと……」 左の道は、上級者用だと書いていました。 果たして大丈夫なものでしょうか……? しかし、牛さんは相当機嫌を損ねているようで、しばらくは動いてくれそうにありません。 あまり時間もありませんし…… 「はい……、わかりましたです」 「すまないね、お嬢ちゃん」 きっと上級者用と言っても、多分少し道が険しいくらいでしょう。 そう思いながら道なりに進んでいく……と。 「うわぁ、」 こ、これは……! 先に進みたいのですが、橋が途中で崩れ落ちてしまっています。 辺りを見渡しても他に渡る手段はなさそうですし……これは、早速も無理な気がしてきました。 やはり、少し待ってでも右の道を行くべきだったでしょうか。 どうしたものかと途方に暮れた、そのときです。 「君、技能を持ってないの?」 突然、後ろから声をかけられました。 振り向けば、冒険者でしょうか。青い髪のお兄さんがいました。 「技能、ですか?」 「そう。冒険を重ねるうちに色々習得するとこんな場所も先に進めるんだけど……君、その様子だとまだ技能を習得してないみたいだね。よかったら一緒に途中まで行こうか?」 「はい!それは是非にお願いしたいのです!」 とてもありがたい申し出に、一安心です。 「よし、じゃあ行こう。……っと、自己紹介がまだだったね。僕はヴィクタ」 「わたしはヴィオレットです」 「ヴィオレットか。それじゃあよろしくね、ヴィオレット」 「はい、こちらこそよろしくお願いしますっ!」 ヴィクタはとても冒険慣れしているようで、たくさんの技能を持っていました。 さっきの壊れた橋は、"ジャンプ"で飛び越えたり、道を塞いだ大岩は"物をどかす"で放り投げたり……わたし一人では、絶対にこの道を通ることはできなかったですが、ヴィクタのおかげでキノコが生えてる手前まで、難なく進むことができたのでした。 わたしもいつか、こんなふうに技能を習得できるでしょうか……? |