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「マーロ?どうかしましたか?」

「…………あとであんた、ナヴィに紹介するから。学院でわからないことあったら、ナヴィに聞いて」

「はいです。しかし、」

「――いいからっ!」

マーロのその剣幕に、わたしはただ、頷くしかできませんでした。
なにか……なにか、マーロにも理由があるのでしょう。
それはわたしには、知る術はありませんが。
……またマーロを、怒らせてしまったでしょうか。

しばらくの間気まずい空気が流れていましたが、やがて口を開いたのはマーロでした。

「…………せっかくここに来たんだし。魔法、見ていく?」

その言葉に、わたしはとても嬉しくなりました。

「はい!魔法、是非に見たいですっ!」

「よし、じゃあちょっと離れてろよ」

マーロは少し得意げにそう言うと、杖を構えて集中し始めました。
それと同時に、辺りの空気が少し変わったのがわたしでもわかります。

――そして、

「わぁ!」

先程のように様々な色の炎が順番に、あるいは同時についたり消えたりして、とても綺麗です!

「すごい!すごいですよ、マーロ!」

「これくらい、基本だぜ」

「それでもすごいです!もっと他にもあるですか?」

わくわくした気持ちでそう聞くと、マーロは少し考えてから言いました。

「……まだ練習中のがあるけど」

「ほんとですかっ!ぜ、是非に見たいのです!」

マーロは少し目を見開くと、再び集中し始めました。
何やら口の中で呪文を唱えた、次の瞬間でした。

「……!」

ぼん、と弾けたような音と白い煙が立ち込め……そこには、何もなかったのです。

「マーロ?」

これは……もしかして、

「……これは難しい魔法だからな。簡単にはいかないのさ」

マーロは魔法が失敗したことに不満そうでした。
しかしわたしは、マーロが魔法を見せようとしてくれたことだけで嬉しいのです。

「そうなのですか……じゃあ、マーロ」

「なに?」

「また、見に来てもいいですか?」

わたしの提案にマーロは少し目を見開き、そして、ニッと口を少し上げました。

「いいぜ。完成したら、ヴィオレットに一番に見せてやるよ」

それは思ってもみなかった、とても嬉しい返事でした。

「ほ、本当なのですか?!絶対、絶対約束ですよ!」

「うわ!バカ、引っ付くな!」

「あ、ごめんなさい……!」

マーロが魔法を一番に見せてくれると言ってくれたのが嬉しくて思わず抱き着いてしまいましたが、マーロの慌てた声に我に返りました。

「……じゃあ、おれ午後からスタット先生の授業あるから」

「は!もうそんな時間でしたか!ではマーロ、また遊びに来てもいいですか?」

「……授業あるときは忙しいけど。それ以外はだいたい、この部屋にいるから」

つまりそれは、授業のないときなら遊びに来てもよい、ということでしょうか。
考えてるうちにマーロは歩きはじめ、部屋の扉のあたりにいました。

「出口まで送ってってやるよ。あんたにナヴィのこと紹介しておきたいし」

「……!はい、ありがとうございます!マーロ!」


昨日は初対面で仲良くなれるかとても不安でしたが、心配はいらなかったようなのです。
魔法学院をあとにしたわたしの足どりは、自然に軽くなっていたのでした。


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