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「えっとー……学術地区っと、」

酒場を出て歩くこと少し。
人の多さに少し驚きましたが、それでも街を歩くのは新鮮でとても楽しいのです。

「ねー、ちょっとキミ!」

辺りを見回しながら歩いていると、不意に後ろから声をかけられました。
振り向くと、綺麗な空色の髪をした女の子がいました。
彼女はにっこり笑って言いました。

「キミのことでしょ、昨日新しくコロナに来た冒険者ってさ」

「はい、そうです……けど、わたし、お姉さんに会ったことありましたか?」

わたしの記憶が確かならば、昨日はマスターとアルターとマーロ、それにかえる君にしか会ってないはずなのですが。
いやでも、わたしはコロナに来る前の記憶を無くしているくらいなので、もしかしたら昨日の記憶もどこかに行ったかもしれません……!

「ううん、初対面で合ってるよ。あたし、盗賊ギルドにいるから情報が早いんだ」

けらけらと笑う彼女は、なにやら明るくて親しみやすい感じの人です。
(そして、わたしの記憶も間違ってなくてよかったです……!)

「あたし、ルーっていうんだ。職業は見ての通り盗賊だよ。冒険に行くときは声かけてくれたら嬉しいな」

「わたし、ヴィオレットです。レンジャーをしています!」

「そっか、ヴィオレットっていうんだ。これからよろしくね、ヴィオ!」

「はいっ!こちらこそ、よろしくお願いしますです!」

ぎゅっと握手すれば、にっこり笑顔が返ってきました。
明るい素敵な笑顔です。

「ヴィオは今からどっか行くの?」

「今から魔法学院に行きたいと思ってます」

するとルーは不思議そうに首を傾げました。

「魔法学院……?レンジャーのヴィオが、なんでまたそんなとこに?」

「実は、ですねー……」

わたしがルーにかくかくしかじかの昨日のやり取りを説明すれば、途中から何やら苦しそうにしたあと、ついに我慢できないように吹き出しました。

「あ、あはははっ!わかる!マーロ、やっぱり女の子に見えるよねぇ?あたしも最初、女の子だと思ってたんだ。あは、あはははっ!」

「そ、そんなに笑ったらマーロが可哀相なのです……」

今にも笑い転げそうなルーを見て、少し……マーロが可哀相になりました。
(だってあんなに気にしていました)

「いーの、だってホントのことだもんっ!まあ、マーロも不本意だろうけど慣れてるからそこまで怒ってないとは思うよー」

「そうでしょうか……でも、やっぱり謝っておきたいです。第一印象は大切だと言いますし」

するとルーはぱちぱちと瞬きをしたあと、わたしの手を取りウインクをしました。

「オッケー、じゃあ魔法学院まで案内したげる!」

それは願ってもない提案でした。

「ほ、本当ですか!是非お願いしたいですっ」

「任せて!じゃ、行こう!」

「はいっ!」

そしてわたしは、ルーに案内してもらい、魔法学院へ向かったのでした。


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