1 とある休日の、よく晴れた日。 久しぶりにゆっくりと原形に戻って日向ぼっこでもしようと微睡んだ、まさにその時だった。 「まっひるー!ちょっとお使い頼まれてよ」 うるさい……もとい、賑やかな我が主(一応)の乱入に、さっきまでのいい気分は吹き飛んだ。台無しだ。 「断る」 間髪入れずに返せば、我が主……ちとせはにんまりと笑みを深くして、言い放った。 「いっいのっかなー?お使い先、あんたの姉さんとこだけど」 自分でも、顔が引きつるのがよくわかる。 月代姉さんからかよ……断るに、断れねぇ。 「……行けばいいんだろ、行けば」 どうせ近所の歌舞練場だ。 さっさと終わらせて、昼寝はそれからでもいい。 そうと決まれば用事は早く済ませるに限る。 ゆるゆる立ち上がれば、七色に光る羽を手渡された。 ふわりと白檀の香りが鼻をくすぐり、それが大切に仕舞われていたことを物語っている。 ……まさか、もしかして。 「……おい、ちとせ。もしかして、」 「うん、そのまさかだよ。虹の姫君が目覚めたみたい……っつっても、あたしも母様から聞いただけだけどさ」 なるほど、そういうことなら話は別だ。 これはちとせの一族の、使命とも言うべき重大な"お役目"なのだから。 「あ、そうそう。なんか届け先はお隣じゃなくてさ、コガネらしいよ。ラジオ塔に来て欲しいんだってさ」 コガネ? なんでまた、ンなとこに。 ただでさえ最近ロケット団とかいう奴らが彷徨いてて、どうにも怪しいことだらけなのに。 「朝比奈さんの占いで出たらしいんだ。彼女はきっと、そこで何かのきっかけを掴むから……ってさ」 朝比奈姉さんの占いはよく当たる。 つまりは、コガネに行くことに何らかの意味があるってことで。 「わかった、すぐに出る」 そうと決まれば身支度を整えるため、ゆっくりと腰を上げた。 |