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「ドリー、ここのデザインなんだけど、」
「うーん、そうねぇ。もうちょっとフリルは控えめに。その分、リボンをたっぷりとしてほしいのだわ。色は、そうね……」

とある洋裁店の応接室。
そこには年若い男女の姿があった。
1人はこの店の店員。
そしてもう1人はこの店の常連客。
すっかりこの店でおなじみのやり取りをする様は、言うなればマシンガントーク。
彼女の口から溢れ出るアイデアを、漏らすことなく少年はその手元のクロッキー帳に書き留めていく。

飽くなき執念……そう、ただただ単純に服が好きなのだと言うには余りある何かを感じることが、今までもあった。
何が彼女をここまで突き動かすのか。
今まで気にしたことはなかったが、一度それに気付いてしまえば、そういえば気になる。

「ドリーは本当に服が好きだね。いつ頃からそうなの?」

それは、只の世間話のつもりだった。
しかし彼女の反応は、違った。
まるいマリンブルーの瞳を見開き、そして、どこか懐かしむような、悲しむような。
およそ彼女の年齢にしては似つかわしくない、大人びた、そんな表情で虚空を見つめる。

訪れる、しばしの静寂。

しまった、いくら友人然としてきたとはいえ、仮にもお客様。
プライベートなことに踏み込みすぎたかと九重が内心焦っていると、目の前の気配が動いた。

「ねぇ、九重。あなた、7年前にライモンを襲った竜巻の話をご存知?」

「は……?あ、いや、知ってますけど」

7年前どころか、この100年で類を見ないくらい大きな竜巻で、被害も相当だったと記憶している。

「なら、翌年のサザナミタウンの津波は?」

それも、有名な話だ。
幸い繁忙期ではなかったため人は少なかったが、それでも人的、物的な被害は相当だったはずだ。

他にもホドモエのつり橋の崩落。他の地方と結ぶ有名客船の沈没。
そのどれもが、ここ15年くらいで起こった、知らない者はいないというくらい大きな出来事だった。

しかし、すっかり彼女のペースに乗せられてしまったが、本来の質問からは大きく外れてきている。

「あの、ドリー……?」

「ねぇ、九重。それらの事件の原因があたくしだと聞いたら、あなたは信じるかしら?」


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