3


「……セーレ、」

雪がはらはらと舞い降りる中。
さすがに彼の指先が冷たくなってきた。
私にはこの寒さが心地好いけれど、飛行タイプも併せ持つセーレにはきっと少し辛いはずだから。

「……これ」

彼は、気に入ってくれるだろうか。
私の差し出した包みを見て、驚いたように数回瞬く。

「僕に?」

私が頷くのを確認してから、それを受け取ってくれた。
かさり、とゆっくり包みが解かれる。

「手袋……?」

真っ白な彼によく似合うだろう、真っ白な手袋。
気に入って、くれるだろうか。

彼は手袋を繋いだ手とは逆の手にはめて、にこりと微笑む。

「ありがとう、紗雪。すごくあったかい」

よかった……彼の言葉に少し安心して胸を撫で下ろす。
しかし、彼が手袋をつけたのはその片方だけで、もう片方はそっとポケットに仕舞われた。

「……?」

ポケットとセーレの顔を交互に見ると、私の聞きたいことを察したであろうセーレが小さく笑う。

「だってね、紗雪」

そして、手袋をつけていないほうの手で私の手をとり、ぎゅっと握った。

「こっちの手は、これで温かいから」

繋いだ手から、じわりじわりと伝わる体温。
セーレが温かいのと同じ分だけ、私の手も温かい。

けれどもそれは決して不快な温度ではなく、どんなに寒い日よりも心地好い体温。

「私も……この温かいのは、好き」

繋いだ掌を中心にじわりじわり広がる温かさは、きっといつか凍りついた私の表情も解かしてくれるのではと……そんなふうに思えるのは、きっとセーレが本当に温かい人だから。

「……もう結構時間が経ってるね。あんまり遅くなるとシルビィも心配するし、そろそろ帰ろうか」

「……そうね」

残念だけれど。
あまり長く外にいてもしものことがあれば、またしばらくは外出できないだろうから。
このときが終わってしまうのを少し残念に思う……が、セーレが歩く方向が来た道とは少し違うことに気付いた。

「……セーレ?」

すると彼は、少しいたずらっぽく笑ってこう言った。

「少し、遠回りして帰ろうよ」

それは私にとって願ってもない提案で、

「ええ」

重ねた手に少し、力を込めた。




セーレと過ごすこの時間が。
きっと、私にとって一番の贈り物。


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