1 「たのもー!」 「たのもー!」 ばん、とジムの扉を勢いよく開け、叫ぶ。 一度やってみたかったのだ、これは。 翡翠も私の真似をして、叫ぶ。 しかし、勢いをつけて入ったはいいけれど、ジムの入口でお馴染みのサングラスおじさんしかいない。 ……はて? キョロキョロと辺りを見回しながら進む。 高い天井は、何となく学校の体育館を連想させた。 それは、足元を見ていなかった私が悪いのか。 一歩踏み出した瞬間、ガコン、と足元が揺れた。 え、と思う間もなく"それ"は床を離れ、高く高く昇っていく。 「ええぇえええ?!」 叫ぶ以外にできることなんて、なかった。 そして間もなく、同じようにガコン、と音を立てて、止まった。 「な…何、あれ…」 下を見れば結構な高さで、なるべく下は見ないようにしようと心に決めた。 「カナエちゃん、僕知ってるよ!馬鹿とハサミは高いところに昇りたい、んだよ!」 えーと…それは私を馬鹿と言いたいのか、同じように高いところに上った自分も含まれているのか…それとも、そもそもどこでそんな言葉を覚えてきたのか、根本的に間違ってることを突っ込めばいいのか。 しかし、何だか昇っただけで妙に疲れてしまったので何もいう気分になれず、ぽんぽんと軽く翡翠の頭を撫でてやるに留めた。 しかし、こんな高いところ…何か意味があるんだろうか…? |