1 「今年ももう終わりだわねぇ」 ストーブの効いたポケモンセンターの一室から窓の外を見下ろせば、ひゅう、と木枯らしが枯れ葉を巻き上げるのが見えた。 ヤダヤダ、と風音が腕をさする仕草をすれば、 「風音ちゃん、寒いの?」 と、なぎがストーブのパネルに手を伸ばした。 「あら、なぎ。私はこれでもちょっと暑いくらいだわ」 ぴ、と設定を変える音がすると同時に、垂が不満げな声を上げた。 氷タイプを併せ持つ彼女は、食べ物同様室温も暑いのは苦手なようだ。 「ああ、いいわよぅなぎ。アタシ下でどてらでも借りてくるわぁ」 寒いのは着込めばいいが、暑いのはさすがに脱ぐわけにもいかない。 風音がひらひらと手を振ってドアノブに手をかけると、彼女が力を込めるよりも先に外からドアが開かれた。 「ただいまさんー……って、カザ、そんなとこで何やってんねん」 「あら、炬じゃないのよぅ。カナエたちはどうしたのよさ」 「ああ、荷物多なりそうやから先にこれ持って帰ってきてん。男連中らとまだショップおるよ」 「ふぅん。ああ、そうだわそうじゃない。寒いからさぁ、下でどてらでももらってこようと思ってね」 すると炬は何かを思い出したかのように持っていた荷物を漁り始める。 「ああ、それやったらええもんあるよ」 ん、と手渡されたのは赤い紙パック。 「なんや、寒そうやなぁてさっき下で山男のおっさんからもろたんやけどな」 確かに炬の格好は季節が変わっても相変わらずの露出で、見ている方が寒くなる。 だからといって、 「見知らぬおっさんからもらうってのはどーなのよさ」 「ええやん、くれるて言うんやし」 しれっと言い放つ様はいっそ清々しい。 まあ炬らしいかという苦笑が漏れる。 「ああ、カザ。下行くんやったら徳利いうんも借りてきてや」 ニ、と炬は笑みを深くした。 「これ飲んだら身体めっちゃ温もるんやて」 |