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チョウジタウン。
忍の隠れ里という名残の残る街。
近くにはいかりの湖があり、ジョウト地方を潤す水源豊かな土地。
名物は、いかりまんじゅう。


「いやぁ、絶品絶品。蒸したてをいただくのも、またオツなもんだわね」

あつつ、と手の平でまだ湯気の立っているおまんじゅうを転がしながら、風音は言った。
その和風な風貌と相俟って、時代劇のひとコマのようだ。

昼も少し過ぎた頃。
チョウジについた私たちは、小腹を満たすためにお茶屋さんに立ち寄った。
お目当てはもちろん、チョウジ名物いかりまんじゅう。
ちょうどおまんじゅうが蒸し上がる時間帯だったみたいで、できたてのあつあつをいただいたのだ。

「あら、垂。アンタ食べないの?」

3つめのおまんじゅうに手を伸ばしながら、風音はまだ一口も口にしていない垂に言った。

「ううん、熱いのは苦手で。少し冷めたら、食べるわ」

なるほど、氷タイプももっているせいだろう。
そういえばさっきから、冷たいお茶ばかりすすっていた。

「垂、アンタ何個くらい食べるの?いる分とっとかないとなくなっちゃうわよ」

風音の言う通り、彼女を始め翡翠や炬も人並み以上に食べるのだ。
冷めるのを待っていたら、お皿の上はからっぽになってしまう。

「そうね、じゃあふたつ。あとはみんなで食べちゃって」

既に今までの食事風景からそれを学習していた垂は、自分のお皿にふたつだけ取ると、大皿を風音の方にやった。

「やっりぃ!」

翡翠が早速手を伸ばす、と、すかさず風音がその手を叩いた。

「翡翠ぃ、アンタ、レディファーストとか知らないわけ?」

「そーゆーことみたいやわ。悪いな、翡翠」

何がレディファーストだよーお前らのが強いじゃんよ、と不満そうにしていたが、反論する根性まではないのか、翡翠は大人しく手を引いた。
(だから余計に風音たちも遠慮がなくなってくるんだろうけど、まあ、なんだかんだで風音たちも翡翠の分は残してるし)

「カナエ、このあとはどうする?」

蒼衣は既に満足したのか、お茶を口にしている。

「このあとねぇ…チョウジって、何かあったっけ」

うーん、と考えていると、

「お嬢ちゃん、観光かい?」

近くのテーブルを片付けていた店のおじさんが、話し掛けてきた。

「そうなんです。私たちチョウジって初めてで、」

そうかい、とおじさんは腕を組んで少し考え、そして、

「そういやぁ、最近いかりの湖に赤い色したギャラドスが出るって話だなぁ。俺は見たことないが、釣人たちの間じゃ今ちょっと有名みたいだなぁ」

赤いギャラドスかぁ…なんか嫌な予感がするんだけどなぁ。

「カナエちゃん、どうするの?」

「うーん…でも他にこれといってなさそうだし、行ってみる?」

それに、赤いギャラドスに興味もあるし。

「よし、今日はもう中途半端だし、明日湖に行ってみよ!」

百聞は一見に如かず。
とりあえず、明日湖に行ってみよう。

すっかり冷めたおまんじゅうを、垂がぱくりとおいしそうに口に運んだ。


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