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「私、ここで生きていきたい」

これが、私の出した答え。

向こうの世界に未練がないわけじゃない。
伯父さんたち親戚の人たちにはお世話になったし、学校もそれなりには好きだし、友達だっていた。
最後に会っておきたい人だっていないわけじゃない。

でも、一年近くこの世界にいて、何となく……ここが私の居場所なんじゃないかって。
そう、思えるようになったんだ。

「そうか……後悔、しないんだな?」

お父さんの言葉に、私は頷く。

「うん……どっちを選んでも、少しはもうひとつが気になると思う。でも、こっちにいたいっていう気持ちの方が強いから。みんなと離れたく……ないから」

それは紛れも無く、私の本音。
この不思議な世界で出会った、私の大切な仲間たち。

「だからさ……みんな、」

私はくるりと振り返る。

「これからも、一緒にいてくれる?」

そしたら、蒼衣も翡翠も風音もなぎも炬も垂も、破顔した。

「阿呆ぅ、今更やろ」

「そうだよ、むしろ俺らはその方がうれしいんだって!」

大丈夫。
何があってもみんながいれば。

私たちの様子を見守っていたお母さんがそっと私の肩に手を置いた。

「カナエ。私たちはここから少し離れたところに住んでるから、一緒には暮らせない……けど、会いたいときはいつでも会えるわ」

「うん……!」

これからはいつでも。
会いたくなったら、会えるんだ。
うれしくて、幸せで。
どう表現していいかわからないくらい、満たされている。

……と、ふとお母さんの言葉で引っ掛かった。

「あ……そういえば、私どこに住もう……?」

また冒険に出てもいい気もするけど、やっぱりここで生きていくなら"帰る場所"は必要だと思う。

「ほしたらね、カナエはん」

すると、不意にタマオさんが口を開いた。

「しばらくはうちらと一緒におりません?まだ住むとこ探すのも大変ですやろ」

「え、いいんですか?」

「ええ、賑やかになってよろしおす」

なぁ皆さん、とタマオさんが問い掛けると、コウメさんたちもにこりと頷いた。

「ありがとう、ございます…!」

たくさんの人に支えられて、助けられて。
今、改めてそれを実感した。

「タマオさん、カナエを、よろしく頼む」

「ええ、しかとお預かりしました」

お父さんとお母さんが頭を下げると、タマオさんも礼で返す。

「カナエ、」

お父さんに呼ばれてそちらを向けば、次の瞬間もとの姿へと戻っていた。

『名残惜しいが、そろそろ戻らねばならない。だが、また会いたくなればいつでも呼ぶといい』

「そうよ、なんなら遊びに来てくれてもいいのよ」

ふふ、とお母さんが笑った。
そしてお母さんは来たときと同じようにお父さんの背に乗ると、ふわりと浮き上がった。

「うん!またね、お父さん、お母さん!」

そして、ゆっくりと名残を惜しむように飛び立った。
すっかり陽が落ちて夜に包まれた空に黄金が溶けていくのを、私たちは見えなくなるまで見送った。

「ほな、行きましょか」

いつの間にかマツバさんやタマオさんたちは、階段の方へと移動していた。

「あ…はい、」

私も階段に向かって一歩踏み出した……ところで、少し振り返って蒼衣の手をとった。

「行こう!」

蒼衣はきょと、と数回瞬きをすると、小さくはにかんで頷いた。

「うん」

まだまだ知らないことの多いこの世界だけど、みんなが一緒なら大丈夫。


私は、この世界で生きていく――!



With this World !!


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