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ひゅお、と風が吹き抜ける。
昼間は暖かかったのに、やっぱり夕方になると冷え込んでくるみたいだ。

私たちはあれからマツバさんに連れられ、歌舞練場から程近いスズの塔へと向かった。
夕日を浴びたスズの塔は、きらきらと黄金色に輝いてなんだか神々しい。

「こっちだよ」

さすがというべきなのか、マツバさんは複雑な塔の内部も迷うことなくするすると進んでいく。
(そう、見た目以上に複雑なのだ。一人だったら間違いなく迷ってしまう)

「うーん……、」

はぐれないようマツバさん、そして舞妓さんに着いて歩いていると、不意に翡翠が妙な唸り声を上げた。

「どしたの、翡翠?」

しかし、よくよく様子を伺うと、翡翠だけじゃない。
蒼衣や風音、なぎ、炬、垂……みんな、なんだか落ち着きなくそわそわとしている。

「や、なんていうかさ……すっげー空気がぴりぴりしてるんだ、さっきから」

すると、翡翠の言葉に風音が、炬が頷いた。

「ああ、やっぱり気のせいじゃなかったんだわね。なんかこう、気圧されるっていうかさぁ」

「うん、喧嘩売ってるんとはまたちゃうみたいやけど……」

「……?私はあんまり感じないけど……、」

蒼衣曰く、
「僕らを見守っているような存在だけど、それがあまりにも大きい」
……らしい。

さっきの話の通りだとするなら。
これは……、



「着いたよ」

そうしているうちに、目的地へとついたらしい。
すなわち、スズの塔の最上階へ。
塔の最上階は舞台のようになっていて、そういえば中学の修学旅行で行った、京都の清水の舞台を彷彿とさせる。

「よろしおすか?」

大丈夫。
何があっても、私にはみんながいる。
覚悟は、できた。

タマオさんの問いに、私はゆっくりと頷いた。
するとタマオさんはにこりと微笑み頷くと、きりりとその表情を引き締めた。
そして、他の舞妓さんに目配せで合図をすると、それぞれ舞台へ散らばる。


次の、瞬間。



しゃ……ん、



鈴の音が、夕焼けの空に響いた。


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