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「そういえば、」

ワカバタウンを出発してしばらくして。
隣を…正確には、蒼衣の隣を歩くヒビキくんが言った。
彼は博士のおつかいだとかで、隣のヨシノシティまで同行することになった。
いくらゲームで訪れたことがあるとはいえ、実際歩いてみるとどこがどこだかさっぱりわからないから有難い。
このタイミングからすると…おそらくは、ポケモンじいさんがタマゴを発見したんだろうか。
彼は続ける。

「カナエさん、こっちにきて1日くらい経つけど…家の人とか心配してんじゃないの?」

翡翠は外の世界がよっぽど嬉しいのか、キョロキョロ辺りを見回しながら歩くから、はぐれないようにするのが大変だ。
そんな翡翠に気を配りつつ、私は答えた。

「大丈夫…だと、思うよ。私、一人暮らしだし…今、学校も休学してるし」

聞かない方がいいと思ったのか、それとも興味を無くしたか。
ふーん、とヒビキくんは呟いて、黙り込んだ。
それはどちらも本当で、

「カナエ、悲しい?」

小さな手でぎゅ、と私の手を握りながら、蒼衣は言った。

「大丈夫、悲しくないよ」

確かに、最初は不安で不安で仕方なかった。
でも、今は蒼衣が居て、翡翠が居て、そしてウツギ博士にヒビキくん、コトネちゃんが居る。

「カナエちゃんカナエちゃん!」

少し先を歩いていた翡翠が、何かを見つけてあわてて戻ってきた。

「どうしたの、翡翠」

「大変大変!あっちでポッポが怪我してる!」

「え?!」

「カナエさん、急ごう」

無言で頷き、私たちは翡翠のあとに続いた。


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