1 「みんな、大丈夫?」 アテナさんのいたフロアからひとつ上がったところ…幸いにも人がいなかった…で、私は皆を一度出してそれぞれ応急手当をしてやる。 垂の毒はそんなに深く吸い込まなかったようで、モモンの実をひとつ食べさせれば、容態は安定してきた。 『前から思ってたんだけど、』 炬の手当を手伝いながら、なぎが口を開いた。 「なに、なぎ」 『カナエちゃんって、たまに肝が据わってるわよね』 『ああ、それはアタシもそう思うわ。妙に図太いっていうかさ』 …好き勝手言ってくれる。 別に私だって怖いものは怖いし、図太いつもりはあまりないんだけど、 『…そう思ってるのはカナエだけだよ』 呆れたように溜息をついて、蒼衣はそうのたまう。 相変わらず心の呟きにまで的確にツッコミを入れてくれる。 そのやり取りに、ここがコガネということもあり、なんだか最初に戻ったような…そんな錯覚を覚える。 でも、あのときとは違う。 私は、ひとりじゃない。 『…あぁ、それでええよ。ありがとうなぎっちゃん』 『どういたしまして』 ぺたぺたと炬の体に傷薬を塗る手を止めると、炬は立ち上がってその体を確かめるように一度大きく震わせた。 『それでさ、カナエちゃん』 一足早く手当を終えて、様子を見ていた翡翠が口を開いた。 「ん?」 『もう結構上ってきたんじゃない?』 言われてみれば、そうかもしれない。 ラジオ塔はそんなに高い建物でもないし、もしかしたらそろそろ…最終決戦、ではないかもしれないけれど、今回の黒幕にお目にかかれるかもしれない。 …ロケット団の目的って、一体何だろう? ランスさんはよくわからないし、ラムダさんはそれ以上にわからない。 アテナさんは…誰かのためだと言っていた。 じゃあ、その"誰か"の目的は何なんだろうか? 今私がここで悩んだってきっとそれはわからないんだけど、それでも思考はぐるぐる回る。 どうにも、下っ端の構成員はともかく…ランスさんやラムダさん、アテナさんと話をしていると、ロケット団が絶対の悪ではない…ような気さえしてくる。 何かのためにたまたまそこにいて、それが偶然私たちとは相入れないだけのような、そんな感覚。 『…カナエ?』 ぼんやりとそんなことを考えていたが、蒼衣の声で我に返る。 「何でもないよ、蒼衣。ちょっと考え事してただけ。…さ、行こっか」 皆の手当も一通り終わった。 目の前にはエレベーター。 私は皆をボールに戻し、一歩。その先へ足を踏み出した。 |