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「みんな、大丈夫?」

アテナさんのいたフロアからひとつ上がったところ…幸いにも人がいなかった…で、私は皆を一度出してそれぞれ応急手当をしてやる。
垂の毒はそんなに深く吸い込まなかったようで、モモンの実をひとつ食べさせれば、容態は安定してきた。

『前から思ってたんだけど、』

炬の手当を手伝いながら、なぎが口を開いた。

「なに、なぎ」

『カナエちゃんって、たまに肝が据わってるわよね』

『ああ、それはアタシもそう思うわ。妙に図太いっていうかさ』

…好き勝手言ってくれる。
別に私だって怖いものは怖いし、図太いつもりはあまりないんだけど、

『…そう思ってるのはカナエだけだよ』

呆れたように溜息をついて、蒼衣はそうのたまう。
相変わらず心の呟きにまで的確にツッコミを入れてくれる。
そのやり取りに、ここがコガネということもあり、なんだか最初に戻ったような…そんな錯覚を覚える。

でも、あのときとは違う。
私は、ひとりじゃない。

『…あぁ、それでええよ。ありがとうなぎっちゃん』

『どういたしまして』

ぺたぺたと炬の体に傷薬を塗る手を止めると、炬は立ち上がってその体を確かめるように一度大きく震わせた。

『それでさ、カナエちゃん』

一足早く手当を終えて、様子を見ていた翡翠が口を開いた。

「ん?」

『もう結構上ってきたんじゃない?』

言われてみれば、そうかもしれない。
ラジオ塔はそんなに高い建物でもないし、もしかしたらそろそろ…最終決戦、ではないかもしれないけれど、今回の黒幕にお目にかかれるかもしれない。

…ロケット団の目的って、一体何だろう?

ランスさんはよくわからないし、ラムダさんはそれ以上にわからない。
アテナさんは…誰かのためだと言っていた。
じゃあ、その"誰か"の目的は何なんだろうか?

今私がここで悩んだってきっとそれはわからないんだけど、それでも思考はぐるぐる回る。

どうにも、下っ端の構成員はともかく…ランスさんやラムダさん、アテナさんと話をしていると、ロケット団が絶対の悪ではない…ような気さえしてくる。
何かのためにたまたまそこにいて、それが偶然私たちとは相入れないだけのような、そんな感覚。

『…カナエ?』

ぼんやりとそんなことを考えていたが、蒼衣の声で我に返る。

「何でもないよ、蒼衣。ちょっと考え事してただけ。…さ、行こっか」

皆の手当も一通り終わった。
目の前にはエレベーター。
私は皆をボールに戻し、一歩。その先へ足を踏み出した。


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