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ヴヴ…ヴ…

どうしたものかと扉の前で立ち尽くしていると、ポケギアのバイブ音が響いた。
急いで確認すると、先程慌ただしく電話を切ったヒビキくん。

「…もしもし?」

なるべく声が響かないように小声で電話を取る。

「あ、カナエさん!今どこにいるの?」

「ラジオ塔の3階…まで来たんだけど、扉がロックされてて開かなくて、」

恐らくロックがかかってるからだろう。
私がいる、扉の外側には見張りは誰もいない。

「マジ?!ちょ、多分それ開けられる!今オレすぐ近くまで来てるから、そのままでいて!」

言うが早いか、ヒビキくんはあっという間に電話を切った。

『ヒビキ、何だって?』

「んー…なんか、扉を開けられるからこっちに向かってるって。風音、とりあえず一度戻る?」

『そーね。まだ先に何があるかわかんないし、体力はとっとくに越したことはないわ』

「うん、ありがとね風音」

私は風音をボールに戻して、壁際にもたれ掛かる。
すると本当にすぐ近くだったらしく、程なくして階段を昇ってくる足音が聞こえた。

「カナエさん!」

「あ、ヒビキくん」

「準備万端できたのに下に誰もいねーからびっくりしたよ。カナエさんが倒したの?」

「う…うん。あと、シルバーくん、」

その名前が出た途端、ヒビキくんの目が驚きに見開かれた。

「シルバー?!なんであいつが…、」

「わからない…私が来たとき、もうここにいたし」

「今は?」

「ロケット団とのバトルが終わったら、どこかに行っちゃった」

私がそう答えると、ヒビキくんは少し残念そうな顔をした。

「そっか、」

「うん…でも、多分シルバーくんがポケモンを思う気持ちは、私たちとそんなに変わらないと思うよ。ただ、ちょっと不器用で、やり方を間違えちゃっただけじゃないかな」

「そんなもんなのかな?」

よくわかんねーや、と、ヒビキくん。

「あ、そうだ。そうじゃなくて、はい、カナエさん」

思い出したようにヒビキくんがポケットから取り出したのは、1枚のカード。
つまりこれは、

「カードキー?」

「うん、多分ここの…だと思う。そう言ってたし」

「……誰が?」

すると、ヒビキくんは。
思いもしなかった名前を口にした。

「ラムダさん、って人」

「…!」

先日、チョウジの地下で出会った…正体不明の、ロケット団員。

「ら…ラムダさんは?」

「なんか、"そろそろここに居るのもヤバそうだから"って、オレにこれを渡して…そのまま、どっか行ったよ」

「…そう、」

何故か私は、落胆した。
もしかしたら…私はラムダさんともう少し話をしてみたかったのかもしれない。


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