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「風音、あとどれくらいで着きそう?」

『そうねぇ、昼までには!』

「なるべく早くお願い!」

『了解!』

ぐん、と風音は少しスピードを上げる。
早く…早く、コガネへ…!



氷の抜け道を抜けて、フスベシティにたどり着いたのが昨日の話。
なんだかいろいろありすぎて、蒼衣となぎを治療のためにあずけて部屋でぼんやりとしていた。
幸い、蒼衣は一時的に激しく消耗していただけで、ゆっくり休めばすぐによくなるとのこと。
なぎも少し時間はかかるけど、悪化はしていないみたいだ。

そして一夜明けた今朝一番。
その報せは突然やってきた。

ピリリリリリ!

けたたましく鳴るポケギアのアラーム音…いや、違う。この音は、電話の着信だ。
誰だろう、こんな朝から。
もぞ、と布団から手を伸ばして音の発生源を探していると、既に起きて身仕度を終えた翡翠がポケギアを握らせてくれた。
着信は、ウツギ博士。

「ん、ありがとう翡翠…もしもし?」

「た…大変なんだ、カナエちゃん!」

…なんだかデジャヴを感じる。
確か、ヨシノでもこんなことなかったっけ…?
寝起きの頭でそんなことをぼんやり考えていると、次の瞬間。
とんでもない言葉が、博士の口から飛び出した。

「大変なんだ、ロケット団が動き始めたみたいなんだ!」

「…!」

寝ぼけた頭が一気に覚醒し、昨日のロケット団員の台詞が蘇る。
確かに言っていた。
これから一仕事する、と。

「既にコガネのラジオ塔が占拠されたらしい。僕はとりあえずジョウト近くのトレーナーに連絡を取って応援を要請しているんだ。ヒビキ君も既にコガネに向かっている」

「…わかりました」

「すまないね、カナエ君だっていろいろ大変なのに、」

電話口で、ウツギ博士は申し訳なさそうにそう言った。

「あ…いえ、大丈夫です。じゃあ、私もこれからコガネに向かいます」

「よろしく頼むよ。カナエちゃんが向かうことは、ヒビキ君にも伝えておくよ」

じゃあ、と慌ただしく博士は電話を切った。
まさか、こんなに早く動くなんて。

…ラジオ塔を占拠した、と言っていた。
試しにポケギアのラジオをつけてみると、

――…れは…ット……サカキさ…

周波数が会ってないので雑音がひどいけど、ロケット団らしき放送が流れる。
ぼんやりなんて、してられない。

「カナエちゃん…、」

心配そうに翡翠が声をかける。

「大変なことになってるみたいだよ、翡翠」

苦笑でそれに応えて、そして皆の布団に手をかける。

「…ごめん、みんな起きて!」

昨日の今日で申し訳ないと思いつつも、私は皆を起こす作業にかかった。


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