1 「寒いと思ったら、ここから風が吹いてるんだねぇ」 チョウジジム突破の翌日。 思いの外チョウジに長居してしまった私たちは、次の街…フスベシティを目指して東へと進み始めた。 工事中だった道路はいつの間にか通れるようになっていて、いよいよ氷の抜け道までやってきたのだ。 「あら、私はこれくらいでちょうどいいわ」 氷タイプを持つ垂はこの冷気が心地いいみたいだ。 「アタシは無理ぃ。昨日のジムといい、寒いのはごめんよぅ。…あ、かがりかがり。ちょっとこっち来て」 「なんやの?」 呼ばれるまま近付いた炬の腕を取る。 「あー、やっぱりアンタ体温高くていいわ」 「なんや、湯たんぽかいな」 暖を取る風音に苦笑する炬。 なんだかその光景がほほえましい。 「カナエ。カナエは寒くない?」 蒼衣がちょこんと首を傾げて聞いてくる。 確かに、ショートパンツに薄手のサマーカーディガンだけど、 「まだ平気かな。ありがと、蒼衣」 昨日、冷凍庫のようなジムに一日いたせいか、感覚がマヒしてしまったようだ。 確かに風は冷たいけど、我慢できないほどじゃない。 それよりも、 「なぎ、霜焼けどう?」 昨日のジム戦で、両手にひどい霜焼けを作ったなぎ。 ポケモンセンターである程度は治療したけど、まだ完全じゃなくて。 「うーん、まだちょっとかゆい…かしら」 そう言って見つめる指先は、確かにまだ赤みがかってる。 「そっか、でもあんまり掻いちゃ駄目だよ」 わかったわ、と、なぎは頷くが、それでもやっぱりかゆそうだ。 …と、そういえばいつもなら聞こえるはずの声が、今日はあまり聞こえないことに気付いた。 「翡翠?」 「…え?あ、あぁ。何、カナエちゃん」 珍しくぼんやり考え事をしていたようだ。 私の呼びかけに、慌ててこっちを向く。 「…?や、ぼーっとしてたからさ。どしたのかなって。疲れてる?」 昨日はかなり頑張ってくれたから、やっぱりまだ疲れが残ってるんだろうか? 「や、ヘーキ」 そう言って翡翠はひらひら手を振る。 ……まあ、本人がそう言うなら詮索はしないけどさ。 ともかく。 いよいよ私たちは、氷の抜け道に足を踏み入れた。 |