1 タンバジムを突破して、アサギに帰ってきたのが2日前。 風音の背中に乗っけてもらったおかげで帰りはすごく快適で、何より翡翠が酔わないのがよかった。 (一度酔うとなかなか回復しないんだもん、そりゃ心配だ) で、その翌日…つまり、昨日。 アサギジムに挑戦しようとその扉を叩くと、そこにいたのはアサギの灯台で出会った、ミカンさんだった。 「あれ…ミカンさん?!」 「あら、カナエさん!」 あの時は思い出せなかったけど、そういえばよくよく記憶を辿ればアサギのジムリーダーってミカンさんだった気がする。 「カナエさん、もしかしてジムの挑戦?」 「うん、でもミカンさんがジムリーダーだって忘れてたからびっくりしちゃって、」 「え?」 「あ、ううん。何でもない!」 危ない、まさか本人目の前にして「10年前のことなんで忘れてた」なんて言えない。 ミカンさんが鋼タイプの使い手なら、炬は確定で…あとは垂かなぁ。 …なんてことを考えてたら、ミカンさんがふいにこちらに歩み寄ってきた。 「カナエさん、」 ス、と私の目の前に差し出されたのは、きらきら銀色に光るジムバッジ。 「え、ミカンさん?」 「あの…これは私からのお礼。アカリちゃんを助けてくれて、本当にありがとう」 「え、いいよ!ちゃんとバトルするよ!」 「ううん、カナエさんに受け取って欲しいの。カナエさんには、その資格があるから。あなたとあなたのポケモンたちの絆は、このバッジを持つに値するから」 そう言ってミカンさんは、私の手にぎゅっとバッジを握らせた。 「あ…ありがとう、ミカンさん!」 きらりと輝くスチールバッジ。 私たちの、絆のあかし。 「そのかわりと言っては何なのだけど、」 ミカンさんは、小さくはにかんで言った。 「また、アサギに遊びにきてくれないかしら?アカリちゃんも、きっと楽しみにしてるから、」 「うん…!私も、ミカンさんやアカリちゃんにまた会いたい!」 約束、と握手をして、私たちはアサギシティをあとにした。 |