1 「うーみーは広いーな大きいーなーっと」 先日タンバシティに行ったものの、主に悪天候やミナキさんのおかげでジムに挑戦するどころじゃなかった。 ので、新しく垂も加えた私たちは、今日こそは!とタンバジムを目指して、先日乗りそこねた船でタンバを目指していた。 「つーきーは昇るし日はしーずーむー」 思わず、小学校で習うような歌も口ずさんでしまう。 (しかし、この歌って月が昇るのも日が沈むのも夜だよねぇ) (太陽は昇らないのかしら?) 「カナエちゃ…た、タンバまだ…?」 よろよろと甲板に翡翠が出て来た。 相変わらず船酔いがひどいみたいで、真っ青になっている。 「あ、翡翠。大丈夫?中で休んでたらいいのに」 「船乗りの兄ちゃんが、外の空気吸って来たらどうだ、って…うぇー」 気分悪ー、と足元にへたり込んだ。 ちょっと待ってて、と言い置いて、甲板の入口にある自販機でおいしい水を買ってきた。 ぴた、と翡翠のおでこに当ててやる。 「ほら、翡翠。お水飲んだらちょっとマシになるんじゃない?」 「あ、りがと、カナエちゃん」 うーん…酔い止めを買い忘れたのは失敗だったなぁ… タンバにもう一度行かなきゃいけないことをすっかり失念してたから、前回の1回分しか買ってなかった。 よしよし、と翡翠の背中を撫でてやっていると、風音が走ってくるのが見えた。 「カナエカナエ!」 「どしたの風音。そんなに慌てて」 「炬と垂が大変なのよぅ。今は蒼衣となぎが止めてるけど、一触即発だわよ」 事情はよくわからないが、とりあえず風音が走って来た以上、ほって置くわけにもいかない。 かといって、翡翠をほって置くのもなんなので。 「風音、ちょっと翡翠見ててあげて?」 「え、アタシがぁ?」 「お願い、ね?」 「わかったわよぅ。じゃ、中はよろしくね」 風音はあれでいて面倒見はいいから、翡翠は風音に任せておけば大丈夫。 よし、と気合いを入れて、私は船内へ向かった。 |