1 心地よい夜風が吹き抜ける。 すっかり天気も回復したみたいで、夜空にはきらきらと星が瞬いている。 そういえば、この世界に来てからはゆっくり星空を見上げることも増えたけれど、ここに来る前に最後に星を見上げたのはいつだっただろう。 街の明かりが眩しすぎて、星の光なんて、2つ3つ見えたらいい方だった。 都会の狭い空を見上げる時間もなく、ただ、あくせく動いていた日常。 都会で育った私にとって「本当の星空」っていうのは、ずっとあの狭い空に星がまばらに見えるものだと思っていた。 だから、学校の宿泊研修で山に行ったときに見た満点の星空はどこかプラネタリウムみたいな作りもののようなものに見えて、少しぞっとしたのを覚えている。 (もちろん、見慣れたら純粋に綺麗だと思ったけれど) 私にとっては都会の狭い空が"本当の星空"で、この世界ではこの満天の星空が"本当の星空"なんだ。 何が"本当"かはその人が育った環境や考えに左右されるんじゃないかなぁ、なんて。 子供の頃に、流れ星に願いをかけると叶うなんてよく言ったものだ。 でも、本当に願いたいことは叶わないって、幼いながらに気付いてた。 何ともないように振る舞っていたけれど、やっぱりどこかで淋しかったんだと思う。 今ではもう慣れてしまったし、それに蒼衣を始めとするみんなもいる。 だから、淋しくは、ない。 今夜はゆっくり夜空を見上げてみようかな。 吸い込まれるような星空を見上げるのも悪くない。 さあ、アカリちゃんのところへ急ごう。 そしたら、満天の星空の下で――、 |