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「うー…」

あれから数時間。
荒波に揉まれて遥々(と、いうほどでもないかもしれないが)私はタンバシティへと辿り着いた。
タンバシティの北端。
どうやらそれが、今私が居るところのようだ。

道中、蒼衣たちについて話すとはいったものの、碌な説明ができた記憶がない。
すっかり頭からずぶ濡れで、風に吹かれると当然だが寒い。

『じゃあ、私はこの辺りにいるから。用が終わったら、戻ってきてちょうだい』

「うん、ありがと。すぐ戻ってくるよ」

私がそう言って走り出そうとすると。
パウワウは、くすくすと笑った。

「…?私、何か変なこと言った?」

『あら、だって貴女。見ず知らずの私の言葉をあっさり信じるんですもの。もし、私がそのままアサギに帰ったら、貴女どうするつもり?』

…言われてみれば、それも一理あるかもしれない。
でも、

「大丈夫。君はそんなことしないって…そんな気がするから」

きょと、とパウワウは私を見つめ、

『冗談よ、ちゃんと待ってるから。ほら、お行きなさいな!』

「ありがとう!行ってくるね…っと」

どうしようかな、と迷った結果、翡翠と炬を呼び出した。
(翡翠はすぐに擬人化したが、炬は「めんどくさい」と、言ってガーディのままだ)

「カナエちゃん…頭ふらふらする、」

『かっ、なっさけないなぁ自分。見てみぃあたしなんぞピンピンしとるわ』

水に強いはずの翡翠がダウンしていて、水が苦手なはずの炬はケロリとしている光景がなんだかシュールだ。
これは翡翠の酔い醒ましと…帰りの酔い止めももらわないといけないな、なんて思いながら、今度こそ。
私たちは、タンバの薬屋さんを目指して、走り出した。

頭上を何かが横切った気がしたけれど。
上を見上げる余裕なんて、そのときの私にはなかった。


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