1 新しい仲間が増えて、一夜明けた。 結局あのあと、なんだかんだで塔や歌舞練場に行く余裕がなく、今日に持ち越しとなった。 驚いたことに、炬は器用なのか要領がいいのか、あっさりと擬人化をコントロールしている。 「え、こんなん簡単やろ?」 …とのことで。 なぎもエンジュ入りした頃に自由に姿を変えられるようになったので、今の仲間たちはみんなその時々に合わせて姿を変えている。 …とはいうものの、いつ何があるかわからないから、誰かはポケモンのままで居て欲しい気もするのだけれど、そのあたりは追々考えるとして。 ともあれ、私たちはポケモンセンターから程近い、歌舞練場へ向かっている。 「カナエちゃん、"かぶれん"って何?」 変な名前ー、と頭の後ろで手を組みながら翡翠。 「えーっと…どう説明したらいいのかな。舞妓さんが歌と踊りを練習する場所…じゃないかな?」 私も詳しくは知らないけど。 すると、反対側に居た風音が興味を持ったのか、 「歌と踊り?楽しそうじゃん!」 「そだねー。でも、歌と踊りが目的じゃないよー」 そう。私が歌舞練場に向かっているのはただの観光じゃない。 ヨシノシティやウバメの森で出会った舞妓さんたち…彼女たちが、ここに居るかもしれない。 少しでもいい。 何か…何か、手掛かりがあれば。 「ちぇ。でも、ちょっとくらいならいいっしょ?」 「うん、せっかくだしね」 私だって、せっかく来たんだから楽しみたいし! そんなことを話しながら歩いていると、歌舞練場に着いた。 私は小さく深呼吸をして、扉に手を掛けた。 そのとき。 「何しはりますの!」 扉の中から聞こえるのは、京訛りの女性の声。 私たちはお互い顔を見合わせ、そして、扉を開いた。 |