1 ふわり、ふわり。 温かいぬるま湯に包まれて揺蕩う感覚。 あれれ。 わたし、さっきまで買い物に行ってたんじゃなかったっけ? 思い出そうとしても思考はなんだかうまく纏まらなくて、この心地よさにうとうとしてしまう。 「……カナエ………カナエ……」 だれ? 私の名前を呼ぶのは、 「待っていた。其方を、待っていた」 待ってた、なんて言われても貴方誰よ。 「愛しき仔よ、我は待とうぞ。……の…で……のを……」 最後は何だか声が遠ざかって、よく聞き取れなかった。 ふわふわと浮かぶ中で、相変わらず辺りは真っ白…と、いうよりはほんの少し蜂蜜色の光に包まれていて。 上を向いても下を見ても、前後左右を見渡しても何処から声が聞こえていたのか、思えばそれも分からなくて。 そもそも私はこれからどうすればいいんだろう。 確かにここは気持ちいいんだけれど、いつまでもふわふわ浮かんでいるわけにはいかない。 ぐるりともう一度辺りを見渡すと、遠くに一カ所。周りと色の違うところがあった。 出られるかもしれない。 ここで浮かび続けているよりは、幾分マシだろう。 そう思った私は、その一点を目指して進み始めた。 段々白っぽい黄色っぽい光が薄れてきて、そして。 「え、あ、ちょ………きぃやぁああああ!!!」 その境目が何処だったのか分からないままに。 落ちた。 |