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「よし、お腹いっぱいになったしそろそろ行こうか!」

流石に森で野宿はちょっと遠慮したい。
荷物をまとめて、立ち上がる、と。

「あれ…あの人、」

艶やかな着物姿。
見覚えのある横顔。
ヨシノシティで出会った…舞妓の、

「タマオさん!」

え、と彼女は振り返る。
私たちは走って彼女に近付く。

「まあ、貴女カナエはんとちやいますの」

相変わらずコロコロとした美しい声で言う。

「お久しぶりです、」

タマオさん、と続けようとすると、彼女は静かに首を横に振った。

「ちやいますよ、カナエはん。私とあんさんは"はじめまして"」

「え、だって…」

「申し遅れました。私はコウメ。舞妓のコウメどす。あんさんがお会いになった、タマオの妹になります」

嘘だ、だってこんなにも

「そっくり、ですやろ?」

楽しそうに、からかうように、コウメさんは言った。

「まあ、それはそうと。カナエはん、おめでとうございます」

「え、あ、はぁ…」

うっかり頷いたけれど、何におめでとうなのかさっぱりわからない。

「ようやっと、目覚めはったみたいで…お母様も、これで一安心ですやろ」

「あの、だから…!」

「まあ、でも、カナエはん」

ぴたり、と私の言葉を遮って、コウメさんは続ける。

「まだもう少し、あんさんの知るには尚早…まだ私からは、何も言えません」

縁が"合"ったら、また。

そう言って、コウメさんは静々と歩きだし、そしてぴたり、と止まって一度振り返った。

「ところで、この森の出口…どっちですやろ?私、道に迷ってしもたみたいで」

コロコロと、それはそれは美しい声でコウメさんはそう言った。
笑った拍子に髪飾りが揺れ、シャラシャラとまるで鈴の音のようだった。


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