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「ズバット、超音波!」

「なぎ、電気ショック!」

指示は全くの同時だった。
しかし、やはり素早さではズバットには敵わない。
キィ…ン、と辺りの空気が震える。
なぎは動きを止め、そして

「メ…メェ?」

混乱…!
ズバットの超音波で混乱に陥ったなぎはふらふらとし、そして、ばん!と自らの体を岩にたたき付ける。

「なぎ!」

やめて、お願い…!
願い虚しく、渚楽は体当たりを続ける。

「なぎ、戻って!」

自分を攻撃し続けるなぎを見ていられず、ボールに戻す。
そして、

「蒼衣…お願い」

こくり、と蒼衣は頷き前に出る。

「ふん、同じことですよ…ズバット、噛み付く!」

「蒼衣、影分身!」

ズバットが蒼衣の体に触れる前に、蒼衣の影がいくつも現れる。
ズバットはそのうちの1体に攻撃を仕掛けるが、それは蒼衣の影だった。

「よし…!蒼衣、念力!」

蒼衣の念力がズバットを襲う。
悶えるように羽ばたき、そして力尽きた。

「く…もういい、戻りなさい!行け、ドガース!」

ランスさんは瀕死のズバットをボールに戻し、次に繰り出してきたのはドガース。

「蒼衣、念力!」

「ドガース、煙幕で視界を奪いなさい!」

ドガースの煙幕が辺り一面に広がり、瞬く間に何も見えなくなる。
この煙幕のせいで、蒼衣の念力は外れたようだ。

そのとき、煙の向こうでランスさんが笑った気がした。
嫌な予感がする。

「蒼衣、」

戻って、と言う前に。
ランスさんは、言った。

「ドガース…自爆」

しまった…!
思ったときにはもう遅く、蒼衣は爆発に飲み込まれる。

「蒼衣!!」


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テーマ「人外ファンタジー」
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