8


そこは少し広い洞窟のようだった。
辺りを見渡せば、そこかしこに柔らかなピンク色。
しかし、その色の持ち主はぐったりとして動かない。
しっぽを切られた、ヤドン。

「ひどい…」

「誰です?」

私の声に気付いた"誰か"が振り向いた。
先程までの団員たちとは、明らかに雰囲気が違う。
恐らく……ランス。

「侵入者がいる、とは聞いていましたが…まさか、貴女のようなお嬢さんとは。はじめまして、我が名はランス…ロケット団で最も冷酷と呼ばれた男」

その口調はひどく丁寧だが、心底馬鹿にしているのは明らかだった。
こういった場面で自分の名を名乗るのは、よほど自分の名が有名で脅しに使えるか…さもなければ、無事に帰すつもりかないか。
そして、この場合は考えるまでもなく…後者だ。

「はじめまして。名乗る程の者でもありませんけれど。どうして…どうして、こんなことをするんですか?」

するとランスさんは、クスリと笑って言った。

「簡単ですよ。私たちには資金が必要なんです。それも、貴女には考えもつかないくらい、たくさんのね」

「そんな…それだけのために、ヤドンは痛い思いをしなくちゃいけないんですか?!」

「何を…ヤドンのしっぽなんて、切ったところでまたすぐに生えてくるでしょう」

心底わからない、といった風に言う。

「ひどい…!私は、貴方を許さない…!」

「結構!貴女になど許してもらわなくとも、私は計画を遂行するのみ!」

行きなさい!と、ランスさんが出して来たのはズバット。
それならば、

「なぎ、がんばって!」

そして、戦いが始まった。


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