6 井戸の奥は薄暗く、そして少々複雑に入り組んでいた。 しかし、所々に照明が設置してあったりするところを見ると、やはり、ここにしょっちゅう人が出入りしているようだ。 一歩、また一歩。 辺りに気を配りつつ、歩みを進める、と。 「何者だ!」 奥から男の声。 「唯の通りすがりのトレーナーよ!」 …嘘はついていない。 事実、私はヒワダの住民ではないし、成り行きではあるが新米トレーナーだ。 「だから!何でそのトレーナーがこんなところに居るんだ!」 問われて私は一瞬考え、 「道に迷ったのよ!」 大嘘だけど。 「……道に、迷っただと?」 あ、リアクションに困ってる。 「……とにかく!俺達の居場所に踏み入った以上、ただでは返さないぜ!」 あ、やっぱりそういう結論になるかー…仕方ないなぁ。 いけ!と、相手が繰り出してきたのはズバット。 翡翠では不利…か。 それなら、 「なぎ!」 素早さでは劣るけれど、飛行タイプには電気を。 「チィ!ズバット、噛み付く!」 「なぎ、電気ショック!」 メェ、と頷き体に電気を纏う。 ズバットはなぎに噛み付き、そして、 「!」 声にならない呻きをあげ、なぎから離れようとする…が、うまく飛べずによろよろとしている。 よし、麻痺だ! 「なぎ、今よ!」 纏った電気が放たれる。 相手のズバットは自由を奪われたまま動けず、なぎの電気ショックが直撃した。 そのまま戦闘不能となる。 「くそ…覚えてろよ!」 一昔前からお馴染みの台詞を吐き捨て、男はズバットをボールに戻して立ち去った。 「…っていうか、あっち走っていったら、あっちに何かあるってバレバレじゃんね」 かといって、そのまま通されるのも何だか間の抜けた光景だとは思うけれど。 ともかく、私たちは男の去って行った方角…井戸の奥へ向かって歩を進めた。 |