5


ひんやりと湿った空気が辺りを包む。
洞窟のような、特有の湿った匂いが鼻をつく。
井戸も思ったよりは深くなく、なるべく下を見ないようにして井戸の底に降り立つ、と。

「カナエ、カナエか?!」

え、と振り返ると、そこにはうずくまるガンテツさん。

「ど、どうしたんですか?!」

「いやなに、そこの梯子から足を滑らせてしまってな…腰を打ってしまったようだ…カナエ、お前さんに奴らを任せてもよいか?」

一瞬の間。
そして、私はゆっくり頷いた。

「風音」

「なに、カナエ」

「風音はここに残って、ガンテツさんと一緒に居てて」

「え、何でよ!アタシだって、」

戦える、と言おうとしたところで風音は言葉を切った。
ガンテツさんは、風音の正体を知らない。
渋々、と風音は「わかったわよぅ」と言い、ガンテツさんの側についた。
いい子、と風音の頭を撫でてやり、私は立ち上がる。

「よっしゃ、カナエ!いっちょトレーナー魂見せたれ!」

背中にガンテツさんの激励を受ける。
私は一度振り返り、ぐ、と親指を立てて走り出す。

ぱしゃり、と水溜まりを蹴り、私たちは井戸の奥へ向かった。


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