3


洞窟の外は相変わらずの雨模様で、一瞬出るのを躊躇う。
しかし、水が嬉しいのか翡翠が勢いよく飛び出してしまったので、私や蒼衣、風音も後に続いた。
(風音などは露骨に嫌そうな顔をしていたけれど)

しかし、雨が降っていたのは僅かな間で、駆け足で少し走ればその雨は次第に弱まり、やがて青空から太陽が姿を見せた。

ふと前方に目をやると、どうやらこの辺りからヒワダタウンらしく、先程までとは道の雰囲気が少し異なっている。

いよいよだなぁ、なんて感慨に耽っていると、へぷち!と足元から小さなくしゃみが聞こえた。
見ると、ずぶ濡れになった翡翠がぐずぐずとしている。

「ああ、雨で走り回るから…ほら、拭いてあげるから皆こっちおいで」

カバンからタオルを取り出し、翡翠、風音、そして蒼衣を順番に拭いてやる。

「さ、早くポケモンセンターに行ってお風呂にしよっか!」

賛成、と口を揃え、歩き始めて間もない頃。
前方で男性が2人、何やら言い争っているのが見える。
あれは…?

少し近付く。
2人は気付かない。
話し声がはっきりと聞こえてきた。

「…ったく、ほら爺さん邪魔だからあっち行ってろよ」

まだ年若い方の男が追い払う仕草をする…と。

「じゃっかぁしいわ!お前みたいな童(わっぱ)なんぞ、わしの相手ではないわ!」

ものすごい勢いでもう1人の男性…おじいちゃんくらいの歳かな…が、怒鳴り付けた。
すると、若い方の男はヒィ!と声を漏らし、舌打ちをして踵を返し…あれは、井戸?の、中に入って行った。

「あの…どうかしたんですか?」

たしかに私はことなかれ主義ではある…が、目の前で起こったことを無視できるほどの楽観主義でもない。
私は、一喝したその老人に話し掛けた。


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